中国の新生児におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症/保菌の臨床的・分子疫学的特性
Clinical and molecular epidemiologic characteristics of carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae infection/colonization among neonates in China
D. Yin*, L. Zhang, A. Wang, L. He, Y. Cao, F. Hu, C. Wang
*Children’s Hospital of Fudan University, China
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 21-28
背景
カルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の伝播は大きな懸念であるが、小児集団におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌感染症/保菌に関するデータは限られている。
目的
中国の新生児において、カルバペネム耐性肺炎桿菌感染症の疫学的・臨床的特性および治療選択肢について分析すること。
方法
復旦大学子供病院において、2015 年 11 月 から 2016 年 10 月 に入院したカルバペネム耐性肺炎桿菌を保菌する新生児 88 例を対象に後向き研究を実施した。抗菌薬感受性試験、β‐ラクタマーゼ遺伝子のスクリーニングの可能性、相同性解析を含めたさらなる研究のために、カルバペネム耐性肺炎桿菌分離株 47 株を無作為に抽出した。
結果
全体で、カルバペネム耐性肺炎桿菌を保菌する新生児の 44.3%(88 例中 39 例)が発症しており、そのうち 71.8%(39 例中 28 例)が院内感染であった。これらの感染症のうち肺炎が 50.0%(28 例中 14 例)、尿路感染症が 42.9%(28 例中 12 例)であった。治療が中止された 1 例を除くすべての感染患者は、ホスホマイシン含有併用療法とカルバペネム含有併用療法、またはそのいずれかにより治癒または改善した。カルバペネム耐性肺炎桿菌分離株 47 株のすべてがエルタペネムに耐性を示し、95.7%がイミペネム、95.7%がメロペネムに耐性を示した。全体の 87.2%(47 株中 41 株)が blaNDM-1 陽性で、パルスフィールド電気泳動の 11 のタイプに属し、multilocus sequence typing 法により、53.7%(41 株中 22 株)が ST278、17.1%(41 株中 7 株)が ST2735 と同定された。
結論
新生児から分離されたカルバペネム耐性肺炎桿菌の大部分が、ニューデリー・メタロ‐β‐ラクタマーゼ‐1 を産生し、高い相同性を示した。新生児のカルバペネム耐性肺炎桿菌感染症に対して、ホスホマイシン含有レジメン、メロペネム/パニペネム含有併用療法は有効であった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
新生児部門におけるカルバペネマーゼ遺伝子型 blaNDM-1 で MLST 型別が ST278 型を中心とするカルバペネム耐性肺炎桿菌のアウトブレイク事例報告である。国内でも既に CRE のアウトブレイク事例報告が NICU でもあるため、今後輸入感染症としてのカルバペネム耐性肺炎桿菌についても理解を深めておく必要がある。
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