糞便微生物移植後のカルバペネム耐性腸内細菌科細菌とバンコマイシン耐性腸球菌の保菌消失の比較:前向き比較試験
Clearance of carbapenem-resistant Enterobacteriaceae vs vancomycin-resistant enterococci carriage after faecal microbiota transplant: a prospective comparative study
A. Dinh*, H. Fessi, C. Duran, R. Batista, H. Michelon, F. Bouchand, R. Lepeule, D. Vittecoq, L. Escaut, I. Sobhani, C. Lawrence, F. Chast, P. Ronco, B. Davido
*Versailles Saint-Quentin University, France
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 481-486
背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の保菌は世界中で増加している。糞便微生物移植(FMT)は、除菌のための魅力的な選択肢のように思われる。本研究では、CRE と VRE の保菌がFMT によって消失するかどうか評価することを目的とした。
方法
2015 年 1 月から 2017 年 4 月の間に、CRE または VRE を消化管に保菌し FMT を受けた患者を対象として多施設試験を実施した。本研究では成人患者を対象とし、FMT の前の週の 1 回を含む、1 週間間隔・ 3 回連続で直腸スワブを採取し、CRE ないし VRE の保菌を確認している。なおFMT 時に免疫抑制がある患者または抗菌薬の処方を受けている患者は除外した。除菌の成功は、直腸スワブを FMT 後 7 日目、14 日目、21 日目、28 日目、および月 1 回 3 か月間実施したうち、少なくとも連続 2 回以上陰性(ポリメラーゼ連鎖反応[PCR]および培養)であることによって判定した。
結果
17 例の患者が含まれ、年齢中央値は 73 歳(四分位範囲[IQR]64.3 ~ 79.0)であった。FMT 前の CRE または VRE の保菌期間の中央値は 62.5 日であった(IQR 57.0 ~ 77.5)。FMT の 1 週間後、8 例中 3 例の患者で CRE の保菌が消失し、9 例中 3 例の患者で VRE の保菌が消失した。3 か月後、8 例中 4 例の患者で CRE の保菌が消失し、8 例中 7 例の患者で VRE の保菌が消失した。定性 PCR の結果は培養と一致した。6 例の患者(各群 3 例)が追跡調査中に抗菌薬の投与を受けた。有害事象は報告されなかった。
結論
本研究では、おそらく症例数が少ないため、CRE および VRE の消失率に有意差はなかったが、傾向は認められた。これらのデータは、より大きなコホートとランダム化試験によって確認するべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
多剤耐性菌の除菌に FMT が有効な手段であるかどうかについて、現在まさに報告が増えつつある。小規模の研究で、評価はまだ固まっていないが、本研究で観察された CRE よりも VRE の方が除菌率が高かったという結果は興味深い。この結果は、腸内細菌叢とその代謝、腸管免疫の複雑な関わりの中で考察されるべきことかもしれず、新しい知見につながる可能性があるが、まずは今後の追試の結果が待たれるところである。
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