第 3 回スコットランド全国有病率調査の結果:住民健康維持活動は医療関連感染を予防するために今必要とされるか?
Results from the third Scottish National Prevalence Survey: is a population health approach now needed to prevent healthcare-associated infections?
S. Cairns*, C. Gibbons, A. Milne, H. King, M. Llano, L. MacDonald, W. Malcolm, C. Robertson, J. Sneddon, J. Weir, J. Reilly
*National Services Scotland, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 312-317
背景
医療関連感染(HCAI)は主要な公衆衛生上の懸念のひとつであり、また罹患および死亡の重要な原因のひとつである。HCAI の減少および抗菌薬耐性の阻止を目的とする方針の策定の参考にするため、地域、国、欧州全体の状況に特化した、強固かつ最新のエビデンス基盤が必要である。
目的
HCAI の有病率および抗菌薬の処方率を評価し、感染の負担軽減を目的とする介入の主な優先地域を特定すること。
方法
欧州の点有病率調査のために作成された欧州疾病予防管理センター(ECDC)のプロトコールを用いて、2016 年 9 月から 11 月の間に国民保健サービスの急性期、非急性期、小児の各病院、および独立病院を対象とする全国点有病率調査を実施した。
結果
HCAI 有病率は急性期成人患者集団 4.6%、小児患者集団 2.7%、非急性期患者集団 3.2%であった。成人患者において最も高頻度に報告された HCAI の種類は、尿路感染症および肺炎であった。抗菌薬の処方率は急性期成人患者集団 35.7%、小児患者集団 29.3%、非急性期患者集団 13.8%であった。調査時に治療を受けている頻度が最も高い感染症は、呼吸器、皮膚および軟部組織、消化器ならびに尿路の感染症であった。
結論
HCAI は、スコットランドにおける公衆衛生上の懸念のひとつであり続けている。尿路感染症および肺炎は、地域で発症するものおよび入院を要するものを含め、患者および医療提供に多大な負担をかけ続けている。感染リスクを上流で減少させることに焦点を合わせた広範な住民健康維持活動は、地域および病院環境の両方においてこれらの感染症を減少させる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ECDC によれば毎年 320 万例が、スコットランドでは毎年成人の急性期病院で 55,500 例が、それぞれ HCAI に罹患していると推計されている。HCAI の大半は予防可能であり適切な感染対策により減少させられるが、それよりもさらに上流にある事象、入院しないことが HCAI の根本的な予防策であることを本論文では指摘している。すなわち、日頃から住民の健康維持活動を推進することが、最終的な医療コスト削減になるという考え方であり、予防に優る治療はないということであろう。
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