分娩第 1 期における生理食塩水浣腸は新生児のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌率を低下させるか?:無作為化対照試験★
Does saline enema during the first stage of labour reduce the incidence of Clostridium difficile colonization in neonates? A randomized controlled trial
A.M. Nada*, R.A. Mohsen, Y.M. Hassan, A. Sabry, N.S. Soliman
*Cairo University, Egypt
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 356-359
背景
母親に対する直腸浣腸は、分娩中における新生児の細菌曝露を低減し、これにより新生児のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌のリスクを低減する可能性がある。本研究の目的は、分娩第 1 期における生理食塩水浣腸について、新生児の C. difficile 保菌を減らす上での有効性を明らかにすることであった。
方法
本研究は、2016 年 1 月から 2016 年7 月にかけて、エジプトの Cairo University Hospital で実施した。合併症のない経腟分娩を行った無症状の母親およびその新生児で、いずれも下痢を認めない者を組み入れた。検討群には生理食塩水浣腸を実施し、対照群には介入を行わなかった。分娩から 1 週間後に新生児から便検体を採取した。プライマリーアウトカムは、便培養による C. difficile の検出、および ELISA による C. difficile トキシンA、B の直接検出とした。
結果
年齢、妊娠回数、出産回数、BMIおよび妊娠期間について、2 群は同等であった(P > 0.05)。検討群、対照群のそれぞれ 13.54%および 37.63%の便検体から C. difficile が検出された(P < 0.001)。さらに検討群の 22.92%、対照群の 53.76%で、便からトキシンA、Bが直接検出された(P < 0.001)。
結論
本研究から、分娩第 1 期における母体の生理食塩水浣腸は、新生児のC. difficile の腸管保菌のリスクを低減する上で有用な手段であることが示唆された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
かねてより幼児で C. difficile の保菌率が高いことが判明していたが、児には分娩時あるいは分娩後早期に伝播するのではないかと推測されていた。母親の膣や環境が可能性として挙げられていたが、本検討はその仮説に基づき、分娩第 1 期に浣腸を行うことで母親の腸管細菌叢からの曝露を少なくし、児のC. difficileの保菌が少なくできるか、調査したものである。2 群で差を認めた興味深い結果であったが、トキシン陽性者数に比し、培養陽性者数が低い結果でもあった。この点や、菌株の特徴も含んだ、より詳しい追試に期待したい。
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