熱傷患者の皮膚型ムーコル症に伴う包帯でのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によるリクテイミア(Lichtheimia)属菌の検出★★

2018.05.31

Real-time polymerase chain reaction detection of Lichtheimia species in bandages associated with cutaneous mucormycosis in burn patients


E. Fréalle*, S. Rocchi, M. Bacus, H. Bachelet, L. Pasquesoone, B. Tavernier, D. Mathieu, L. Millon, M. Jeanne
* Université de Lille, France
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 68-74
背景
フランスのリール大学病院の熱傷病棟で、主にリクテイミア(LichtheimiaAbsidia])属菌に起因する皮膚型ムーコル症が複数回にわたり発生している。
目的
創傷被覆用滅菌ガーゼの保定に使用された非滅菌包帯が病原菌を媒介する役割を果たす可能性を検討すること。
方法
2014 年 3 月および 2016 年 7 月の独立した 2 回の発生で収集した 8 個のクレープ包帯および 6 個の伸縮性包帯に対し、従来の培養法、ムーコル目菌(Mucorales)のリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、および Lichtheimia 属菌に特異的な qPCR による菌類学的分析を実施した。2013 年 11 月から 2016 年 7 月までに熱傷患者で発生した Lichtheimia 属菌によるムーコル症 7 例の特徴も収集し、汚染の可能性がある包帯と臨床的感染症との疫学的関係を評価した。
結果
培養の結果、1 個のクレープ包帯でリクテイミア・コリムビフェラ(Lichtheimia corymbifera)1株が分離され、Lichtheimia属菌の qPCR の結果はクレープ包帯 8 個中 6 個、および伸縮性包帯 6 個中 4 個で陽性であった。菌種に特異的な qPCR では、リクテイミア・ラモサ(Lichtheimia ramosa)、リクテイミア・オルナタ(Lichtheimia ornata)、および L. corymbifera が包帯 10 個中 6 個、5 個および 4 個でそれぞれ同定された。ムーコル症患者では、L. ramosa および L. ornata がそれぞれ 5 例および 2 例で陽性であった。
結論
本研究のデータから、疫学調査におけるムーコル目菌の qPCR の有用性、本センターの熱傷患者の皮膚型ムーコル症においてこれらの包帯が果たす潜在的な役割、つまりは、広範な創傷の被覆における滅菌包帯の必要性が裏付けられた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ムーコル症は造血幹細胞移植後の血液疾患患者に発生する日和見真菌感染症としての病態が知られているが、本例のように「熱傷患者における皮膚ムーコル症」の報告が散見される。過去にも同様に未滅菌の包帯の汚染による熱傷部位への感染症がいくつか報告されており、決して看過できる感染症ではない。熱傷部位には、滅菌ガーゼや滅菌ドレッシング材を使用するが、その上を覆う包帯が汚染されていて、明らかに直接熱傷部位と接触していなくても感染するため、未滅菌包帯を「広範な」創傷の被覆に使用するのは控えるべきと本論文では結論づけている。

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