中国江蘇省の病院 176 施設の集中治療室における院内感染に関する対象限定サーベイランス
Targeted surveillance of nosocomial infection in intensive care units of 176 hospitals in Jiangsu
province, China
Y. Li*, X. Cao, H. Ge, Y. Jiang, H. Zhou, W. Zheng
* Nanjing Drum Tower Hospital, The Affiliated Hospital of Nanjing University Medical School, China
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 36-41
背景
院内感染は、世界中の病院で治療およびコストに影響を及ぼしている。集中治療室(ICU)における院内感染の対象限定サーベイランスに関するデータはほとんどなく、また、院内感染のリスク因子に特化したデータは特に限られている。
方法
2 次病院および 3 次病院 176 施設の ICU において、院内感染の対象限定サーベイランスを実施した。データは Minke software を用いて収集および要約され、その後、四半期に一度フィードバックされた。
結果
院内感染発生率は低下がみられ、1,000 患者日数あたりの院内感染発生率および調整発生率は、それぞれ、25.63‰、7.41‰(2010 年)、9.73‰、2.76‰(2015 年)であった。総合病院における院内感染発生率は、専門病院よりも高かった。中心ライン関連血流感染(central-line-associated bloodstream infection;CLABSI)およびカテーテル関連尿路感染症(catheter-associated urinary tract infection;CAUTI)の発生率は低下がみられ、また、人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)の発生率は 20.33‰から 2.76‰へと著しく低下した。ICU 間で統計学的に有意な差は認められなかった。院内感染の原因として発見される頻度が最も高い 6 種の病原菌は、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii;AB)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae;KP)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)であった。カルバペネム耐性グラム陰性桿菌の分離率は、カルバペネム耐性 AB 80.53%、カルバペネム耐性緑膿菌 39.94%、カルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)24.86%、およびカルバペネム耐性大腸菌 9.23%であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の分離率は 66.30%であった。回帰モデルで分析すると、CRKP の増加傾向は統計学的に有意であった。
結論
ICU における VAP、CAUTI および CLABSI の発生率は高く、また多剤耐性病原体は院内感染の一次病原体であった。対象限定サーベイランスの実行により院内感染のリスク因子が明らかになり、ICU の患者における院内感染発生率を低下させるために効果的な介入策を実施できる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
中国江蘇省 176 病院の ICU のデータである。カルバペネム耐性グラム陰性桿菌の分離率、MRSA 分離率の高さは、これだけですでに大きな課題であり、人が頻繁に移動する今日、我々にとっても脅威となり得ると思われた。
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