新生児室におけるゲンタマイシン耐性メチシリン感性黄色ブドウ球菌(Staphlococcus aureus)のアウトブレイク★★
Outbreak of gentamicin-resistant, meticillin-susceptible Staphlococcus aureus on a neonatal unit
S. Eldirdiri*, J. Lee, A. Jack, A. Wright, A. Findlay, G. Phillips
*Ninewells Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 419-424
背景
本報告では、英国・ダンディーにある Ninewells 病院の 21 床の新生児室において発生した、ゲンタマイシン耐性メチシリン感性黄色ブドウ球菌(gentamicin-resistant, meticillin- susceptible Staphlococcus aureus;GR MSSA)のアウトブレイク 事例について述べる。
方法
新生児室に直接入院した乳児らが入院中に GR MSSA を獲得し、2 つの新たな GR MSSA 分離菌が採取されたことがアウトブレイク調査のきっかけとなった。MSSA 症例のデータおよび患者の分離菌のアンチバイオグラムが警告として通知され、また以前の症例を検出するため微生物学的記録が広く調査された。
結果
6 か月間で、乳児 8 例がアウトブレイク株に感染した。パルスフィールド・ゲル電気泳動による全分離株のタイピングおよび spa タイピングの結果、すべてが clonal complex 30、spa 型 t012 であることが示された。妊娠 24 週 の時点で出生体重 500 g で生まれた乳児 1 例を除き、アウトブレイク株のうち菌血症に関連があるものはなかった。治療および保育器環境の拭き取り検体の観察から、保育器が最も可能性の高いアウトブレイク株伝播の感染源であることが示唆された。採取された 11 の表面検体のうち3 つがアウトブレイク株陽性であった。調査によって、清掃中に羽根車がルーチンで取り外されていないことが明らかになり、残留物が保育器内部に見られた。羽根車および保育器内部から採取された拭き取り検体から、アウトブレイク株が検出された。
結論
新生児室から採取された GR MSSA 分離菌は、感染制御システムにおいて警告対象の病原体として設定された。保育器の清掃と消毒に関する新たなガイドラインが実行され完全に遵守された後、1 年の追跡調査の間にさらなる症例が検出されることはなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
新生児集中治療室(NICU)で使用される保育器は種々の部品から構成された極めて複雑な構造で清掃が容易に実施できないことがわかっている。清掃手順が適切に実施されないと本例のように適切な湿度の空気を送り出す羽根車はホコリが付きやすく湿気とともに細菌が付着すると容易に供給源となるため、適切な除菌清掃が重要となる。日本の NICU においてもこの種の保育器は使用されており、使用後の清掃消毒が不適切であると同様のアウトブレイクが発生する。各メーカーが推奨する消毒清掃方法に沿って実施されているかを今一度見直す必要がある。
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