スコットランドの救急部における患者間の C 型肝炎ウイルス伝播に関する分子的および疫学的エビデンス★★

2018.04.29

Molecular and epidemiological evidence of patient-to-patient hepatitis C virus transmission
in a Scottish emergency department


I. Johannessen*, J. Danial, D.B. Smith, J. Richards, L. Imrie, A. Rankin, L.J. Willocks, C. Evans, C. Leen, P. Gibson, P. Simmonds, D. Goldberg, A. McCallum, K. Roy
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 412-418
背景
医療現場において、C 型肝炎ウイルス(HCV)の伝播はまれである。ルーチンの感染制御策は、C 型肝炎ウイルスの伝播が予防可能な「決して発生してはならないイベント」であるべきということを意味する。
目的
医療関連の急性 HCV 感染症の診断に関して検討すること。
方法
院内曝露が関連する急性 HCV 感染症例 1 例について、疫学的および分子的調査を行った。
結果
急性 HCV 感染症患者 1 例の治療歴に関する詳細調査により、同時に救急部にいた患者 1 例からの伝播が推定原因であることが明らかになり、この可能性はウイルス配列解析によって裏付けられた。正確な伝播経路は特定されなかったが、双方の患者および感染源への医療介入は低侵襲なものであった。感染制御のレビューにより、手指衛生、個人保護具の不適切な使用および救急部の血液ガス測定装置表面の血液汚染といった、原因経路における可能性のある寄与要因が明らかになった。
結論
救急部の患者間に生じた、環境汚染により可能となった HCV 伝播に関する分子的および疫学的エビデンスを示した。HCV 感染症患者は一般集団より救急処置を受ける頻度が高く、また、感染した患者の大部分は感染を知らないままであったり、感染性を維持したままである。院内での HCV 伝播リスクを最小限にするため、器具、部門の設計、職員の行動および患者リスクを定期的に見直すことが必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
HCV における院内感染を証明することの難しさは、HCV 感染が発症しても無症状で進行するためである。本論文は慢性 HCV 感染患者から間接的接触より HCV の院内感染が証明された救急室における最初の報告である。感染経路として、共有器材の表面汚染,特に血液ガス装置の汚染からの感染が推測され、医療スタッフの手指衛生や手袋交換が不適切であったこととが相まって発生したと推測されている。この院内感染を契機にこの患者以外に同時期に救急室を受診した 31 例の患者について遡及調査が実施されたが HCV 陽性者は認められなかった。HCV による院内感染は、過去に透析室での環境汚染による同様の報告がある。未同定の病原体から患者から患者および医療従事者から患者、そして医療従事者から患者への交差感染を防止するために標準予防策があるが、本例ではそれが適切に実施されなかったことで発生した。

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