基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)保有の検出を目的として直腸スワブと増菌培養を用いた ESBL PCR 法★
Extended-spectrum β-lactamase (ESBL) polymerase chain reaction assay on rectal swabs and enrichment broth for detection of ESBL carriage
W. van den Bijllaardt*, M.M. Janssens, A.G. Buiting, A.E. Muller, J.W. Mouton, J.J. Verweij
*Elisabeth-Tweesteden Hospital, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 264-269
背景
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)保有の高リスク患者に対する ESBL スクリーニングおよび接触予防策は、重要な感染制御策と考えられている。接触予防策は費用がかかり、また患者ケアに有害な影響を及ぼす可能性があるため、ESBL 保有の迅速な除外と、それによる接触予防策のより早期の中止が望ましい。
目的
本研究では、ESBL 保有に対するスクリーニング検査として、blaCTX-M 遺伝子を標的としたESBL PCR 法の性能を評価した。
方法
2 つの方法として、直腸スワブに直接実施する PCR 法 と、一晩培養後の増菌培養を用いた PCR 法を比較した。参照標準は、選択寒天培地で一晩増菌培養した ESBL 産生腸内細菌科細菌の培養と、コンビネーションディスク拡散法により組み合わせて行った確認とした。マイクロアレイを用いて相違分析を実施した。2 次分析を実施して、PCR 法の標的として blaSHV 遺伝子を含めることによる性能改善を評価した。
結果
患者 385 例から採取した直腸スワブ検体計 551 個を解析対象とし、このうち 28 個(5%)は培養で ESBL 陽性であった。感度、特異度、陽性的中率および陰性的中率は、スワブ検体に対する直接の PCR 法ではそれぞれ 86%、98%、67%および 99%、増菌培養を用いた PCR 法ではそれぞれ96%、98%、75%および 100%であった。検査の標的として blaSHV 遺伝子を追加すると、陽性的中率は低下したが、感度と陰性的中率には変化がなかった。
結論
直腸スワブ検体に対する直接の PCR 法による ESBL スクリーニングは、陰性的中率が高く、従来の培養と比べて最大 48 時間速く、したがって接触予防策のより早期の中止を促進し、これにより患者ケアの改善と院内の貴重な資源の節減をもたらす。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ESBL 保有に対するスクリーニング検査として、CTX-M が優勢なエリアでの blaCTX-M 遺伝子を標的とした ESBL PCR 法の性能を評価したオランダの研究である。PCR 検査で陰性になれば、接触予防策を解除する。検査に要する費用は上がるが、接触予防策を最大 2 日早く解除することによる費用削減が可能になる、と言う。他の国で有用かどうかは、検査費用だけでなく Prevalence も重要な因子になると思われる。
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