院内感染敗血症における死亡リスクに影響する臨床的因子★

2018.02.28

Clinical factors influencing mortality risk in hospital-acquired sepsis


C. López-Mestanza*, D. Andaluz-Ojeda, J.R. Gómez-López, J.F. Bermejo-Martín
*Hospital Clínico Universitario de Valladolid, SACYL, Spain
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 194-201
背景
院内感染敗血症における死亡リスクを増加させる因子の特定は、院内感染敗血症の予防および予後の改善に不可欠である。
目的
HAS 患者の臨床的特徴、および死亡に関連する臨床的因子を評価すること。
方法
2011 年から 2015 年までスペインの主要病院において、HAS 患者を対象に後向き調査を行った。国際疾病分類第 9 版臨床修正版(ICD-9-CM)の敗血症に関連するコードのいずれかを付与された成人のデータが収集された。SEPSIS-2 の定義を満たし、入院直後の 48 時間の間に感染のエビデンスが認められなかった患者が対象となった(N = 196)。多変量解析により死亡のリスク因子を特定した。
結果
院内感染敗血症患者は心血管疾患に関連するリスク因子の多く(男性、加齢、先行する心臓病、動脈性高血圧症、脂質異常症、喫煙習慣)、およびがんを有していることがわかった。心血管疾患または慢性腎疾患は、28 日時点での死亡に関連していた。入院から敗血症の診断を受けるまでの時間および臓器不全の存在は、28 日時点での死亡および病院死亡のリスク因子であった。敗血症に関連するエピソードの 1 つ以上の経験は、病院死亡のリスクを増加させた。敗血症の早期発見治療のための敗血症対応策 sepsis code の実施は、病院死亡を防いだ。
結論
本研究により、院内感染敗血症患者における死亡に関連する複数の主要因子が特定された。敗血症を早期に発見および治療するための監視プログラムの実施することで、明確な利益につながる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
入院 48 時間以上経過した後に発生する院内発生敗血症の予後を決めるリスク因子について、スペインのバリャドリッド市内の大学病院において過去 5 年間の「敗血症」診断症例について後向き調査を実施した結果、心血管疾患と慢性腎疾患の基礎疾患では予後が悪く、また年齢、敗血症対応策の実施、臓器障害、敗血症の履歴が予後不良の予測因子であった。分離された菌種は、196 例中、グラム陽性菌は 73 例、グラム陰性菌 97 例、嫌気性菌 5 例、カンジダ属 11 例で、感染部位は、尿路 25 例、手術関連 66 例、呼吸器 35例、が原発性またはカテーテル関連敗血症が 50 例、その他 10 例であった。カテーテル関連の敗血症は、ブドウ球菌属が 26 例と約半数をしめており、本論文では言及されていないが「血管留置カテーテルの管理」が気になるところである。

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