小児における MRSA アウトブレイクの次世代シークエンシングによる遺伝子学的特徴
Genomic characterization of a paediatric MRSA outbreak by next-generation sequencing
E. Ugolotti*, E. Di Marco, R. Bandettini, R. Biassoni
*Istituto Giannina Gaslini, Italy
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 155-160
緒言
小児集中治療室においてアウトブレイク発生の疑いがあった際に単離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の 12 株を全ゲノムシークエンス法で解析した。
目的
MRSA 株のクローン性を高い識別能で明確にすること、ならびに抗菌薬に対する耐性および毒性の遺伝子学的決定因子の有無を評価すること。
結果
12 株中 10 株が multi-locus sequence type ST2625 に属し、残りの 2 株は ST8 であった。ST2625 株の 1,126 個の遺伝子に基づく解析で、これらの株がクローン性を有し、同一アレルの 98.3%超を共有していたことが示され、1 株は医療従事者から採取された。ST2625 株の特徴は、ブドウ球菌カセット染色体(SCC)mec IVa 型であり、resistoma 解析により、表現型と遺伝子型の特徴が一致することが示された。毒性に関連する 63 個の遺伝子の研究は、示されたクローン性のパターンと相関した。
結論
本解析によってアウトブレイクの発生が確定された。それにより、標準的な感染制御策が厳密に実施され、アウトブレイクの速やかな終息につながった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
アウトブレイク事例における MRSA の遺伝子相同性の全ゲノムシークエンス法による解析である。予想されることだが水平伝播したと思われる株はほぼ同一の遺伝子配列であったが、それでも菌株毎にわずかな差異があった。MRSA が水平伝播する過程で、少しずつながらも変異している証拠でもある。逆に本論文からは、全ゲノムシークエンス法が従来の遺伝子相同性を比較する方法であるパルスフィールドゲル電気泳動法やmulti-locus sequence typing(MLST)法と比べて優れているとはいえないだろう。
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