病院の給水ネットワークのモノクロラミン消毒後における生きているが培養できないレジオネラ菌の検出
Detection of viable but non-culturable legionella in hospital water network following monochloramine disinfection
B. Casini*, A. Baggiani, M. Totaro, A. Mansi, A.L. Costa, F. Aquino, M. Miccoli, P. Valentini, F. Bruschi, P.L. Lopalco, G. Privitera
*University of Pisa, Italy
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 46-52
背景
レジオネラ症の予防は、レジオネラ(Legionella)属菌による病院給水ネットワークの汚染を制御するためにモノクロラミン消毒が二酸化塩素の代替法として最近導入された医療環境においては、依然として重大な問題である。低用量モノクロラミンによる継続的処理は、場合によっては、レジオネラ属菌の生きているが培養できない状態を誘導したことがある。
目的
長期間にわたる継続的なモノクロラミン処理の間における、そのような休眠細胞の復活について検討すること。
方法
2010 年 11 月から 2015 年 4 月 の間に、水およびバイオフィルムのサンプル 162 個を採取し、標準的手法によってレジオネラ属菌を分離した。モノクロラミン濃度が 1.5 mg/L 未満であったサンプル採取箇所では、生きているが培養できない状態の細胞について臭化エチジウムモノアジド・リアルタイム PCR(qPCR)により検査を行い、Acanthamoeba polyphaga CCAP 1501/18 において「復活」試験を実施した。健康保護庁のプロトコールに従って、5 L の水サンプル 60 個について自由生活性アメーバ原虫を探索した。
結果
合計で、以前にレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)ST269 陽性が認められた箇所から採取したサンプル 156 個中 136 個(87.2%)は培養陰性であったが、qPCR では 47 個(34.5%)のみが陰性であった。臭化エチジウムモノアジド・リアルタイム qPCR では陽性結果は得られなかったが、モノクロラミン濃度が 1.3 ± 0.5 mg/L の箇所のサンプル 22 個中 4 個で、生きているが培養できない状態のレジオネラの再発生が示された。病院の給水ネットワークにおいて、A. polyphaga アメーバの存在が確認された。
結論
本研究は、病院の給水ネットワークにおける長期間にわたる継続的なモノクロラミン処理の間に、生きているが培養できない状態のレジオネラが復活した証拠を示した初の報告であり、病院の給水系におけるレジオネラ定着の制御を確実に行うために、適切かつ間断ないモノクロラミン処理を維持することの重要性を強調している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
温浴施設の衛生管理として使用される次亜塩素酸はアルカリ泉で効力が低下するなどの問題があったことから、わが国でもモノクロラミンは平成 27 年 3 月 31 日付けの厚労省通知「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」でも取り上げられている。本論文はモノクロラミン処理した後に培養陰性となっても、条件によってはレジオネラの再発生が起こりうることを示したものである。臨床的にはそのような報告はないが、今後注意が必要かもしれない。
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