患者が入室している入院病室における 405 nm 光源の継続的使用による病院表面の普遍的除染★
Universal decontamination of hospital surfaces in an occupied inpatient room with a continuous 405 nm light source
S.E. Bache*, M. Maclean, G. Gettinby, J.G. Anderson, S.J. MacGregor, I. Taggart
*Glasgow Royal Infirmary, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 67-73
背景
天井に設置した 405 nm光による高輝度狭帯域光環境消毒システム(HINS-light EDS)は、熱傷病棟の環境表面の細菌汚染を27%~75%減少させることがこれまでの研究で示されている。曝露時間を延長したときの有効性およびその想定される作用機序を検討した。
目的
熱傷病棟内の試料を採取した表面で得られた細菌効果と405 nm 光の照度および曝露時間との相関を確認すること。
方法
HINS-light EDS の 7 日間の使用前、使用中、および使用後に、熱傷病棟の患者が入室している隔離病室内の環境表面から寒天培地を接触スタンプ法を用いて 70 の試料を採取した。独立した3つの試験でこの採取を繰り返した。統計解析により、HINS-light EDS 使用期間延長における環境汚染の有意な減少の有無、および輝度と殺菌効果との関連の有無を明らかにした。
結果
HINS-light EDS 使用中における表面細菌数の平均値の減少は22 ~ 86%であった。HINS-light EDS の使用を停止すると、78 ~ 309%の増加を認めた。各試料採取場所において殺菌効果と輝度との間に相関は認められなかったが、殺菌効果と曝露時間との間には強い相関が認められた。
結論
HINS-light EDS への曝露時間を延長することによって、熱傷病棟内の表面の累積的除染が認められた。曝露時間の重要性および照度によらない空気消毒効果の可能性を強調するものである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
耐性菌の増加が世界中で懸念されているなかで、院内で発生する耐性菌による交差感染は、医療従事者の手指や器具を介するのみならず、汚染された環境も大きく影響する可能性があるため、環境整備の方法が論議されている。特に熱傷患者における植皮後の創部は感染の危険性が極めて高く、ヘパフィルターによる空気清浄化、紫外線照蒸気化過酸化水素などの試みがされているが、コストと時間の問題が残されており、さらに患者在室中に実施することはできない。一方、波長 405 nmの青紫色可視光は殺菌性があり、かつ安全で人体への影響がないとされており、その臨床応用が期待されている。本論文ではこの可視光を使用して環境表面の殺菌効果を主にブドウ球菌を指標に評価した。長期間の曝露により、より対象表面の細菌数を減少させることが認めらたが、減少率が5 分の 1 ~ 10 分の1 程度であり、患者の感染症発症予防に十分な量であるのか、今後の実地検証が必要である。
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