血液内科病棟でのパラインフルエンザウイルス 3 型のアウトブレイク時における分子疫学および環境汚染★★
Molecular epidemiology and environmental contamination during an outbreak of parainfluenza virus 3 in a haematology ward
T. Kim*, C.E. Jin, H. Sung, B. Koo, J. Park, S.-M. Kim, J.Y. Kim, Y.P. Chong, S.-O. Lee, S.-H. Choi, Y.S. Kim, J.H. Woo, J.-H. Lee, J.-H. Lee, K.-H. Lee, Y. Shin, S.-H. Kim
*University of Ulsan College of Medicine, Republic of Korea
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 403-413
背景
媒介物または汚染表面は伝播経路としてみなされているが、医療現場でのヒトパラインフルエンザウイルス 3 型による環境汚染の役割は確立されていない。
目的
ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型の院内アウトブレイクおよび環境微生物調査の結果を報告し、院内伝播源および環境汚染の役割を明確にすること。
方法
2016 年 5 月から 6 月に発生したヒトパラインフルエンザウイルス 3 型のアウトブレイク時に、集団感染した患者が接触した環境表面からスワブを用いてサンプルを採取し、感染患者および疫学的に関連のない対照から採取した呼吸器系検体を用いた。赤血球凝集素/ノイラミニダーゼ遺伝子および融合蛋白質遺伝子のシークエンシングによって、ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型株の疫学的関連性を検討した。
結果
ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型に感染した患者 19 例のうち、8 例が造血幹細胞移植レシピエントであり、1 例が医療従事者であった。また、4 例が上気道感染、12 例が下気道感染を呈していた。19 例のうち、6 例(32%)が市中発症型感染(入院から 7 日未満に発症)、13 例(68%)が院内発症型感染(入院から 7 日以降に発症)であった。系統発生解析で主に 2 つのクラスター(感染集団)(患者 5 例および患者 3 例+医療従事者 1 名)が同定された。したがって、7 例(37%)が院内伝播として分類された。呼吸器のポリメラーゼ連鎖反応検査結果が陰性に転じてから12 日目までに、ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型は環境スワブ 49 個中 21 個(43%)で検出された。
結論
ピークシーズン時のヒトパラインフルエンザウイルス 3 型院内アウトブレイクは、その 3 分の 1 以上が院内伝播に起因し、市中からのヒトパラインフルエンザウイルス 3 型の複数にわたる移入によるものであることから、ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型の広範な環境汚染を示す実験的エビデンスが得られた。汚染された表面および媒介物との直接的接触または感染した医療従事者からの間接的伝播が、院内伝播の原因と考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ヒトのパラインフルエンザは、ヒト RS ウイルスと同様に、乳児・小児のよく知られた呼吸器感染症であり、免疫能が正常であると軽度の上気道炎症状で自然寛解するが、造血幹細胞移植後の患者では時に重篤となるうえに、長期にウイルスを排泄するするため、このような状況下ではアウトブレイクが発生しやすい環境ができあがる。感染経路はしばしば飛沫感染と言われるが、飛沫感染は接触感染の特殊な形態であることを考慮すると、飛沫感染する感染症はすべて接触感染する。したがって、今回のパラインフルエンザのアウトブレイクはまさにこのことを証明したものであり、高度に免疫能低下状態にある患者がいる病棟での「ウイルス性上気道感染症」は時に重大なアウトブレイクを引き起こす危険性があるため、医療従事者や訪問者の日常的な感染予防対策は極めて重要である。
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