アルコール放出ドアプレートが手指接触時の表面汚染を軽減する可能性

2017.12.25

The potential of alcohol release doorplates to reduce surface contamination during hand contact


E.L. Best*, P. Parnell, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 424-429
背景
至適な手指衛生は、汚染された環境表面との接触によって損なわれると考えられる。
目的
手指接触時の表面汚染を軽減する新開発のアルコール放出ドアプレートの in vitro での有効性を検討すること。
方法
アルコールジェルが注入されたドアプレート「Surfaceskins」の試作品と対照(アルミニウム製)ドアプレートを水平に固定し、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)またはクロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)で汚染した指に曝露(接着)させた(各微生物につき N = 72)。次いで検討法を変え、ドアプレートを垂直に固定し、黄色ブドウ球菌またはE. faecalis のついた手指で、0、3、4、6、7 日目に曝露(接着)を行った(各微生物につきN = 90)。曝露前および曝露直後のプレート表面の汚染を、寒天接触培地を用いて測定した。
結果
水平に固定した Surfaceskins のドアプレートは、黄色ブドウ球菌、E. faecalis および大腸菌に対して殺菌作用を示したが、C. difficile に対しては殺菌作用を示さなかったため、黄色ブドウ球菌と E. faecalis の試験のみを継続した。垂直に固定した Surfaceskins のドアプレートは、7 日間にわたり黄色ブドウ球菌に対して迅速な殺菌作用を示した。いずれの場合も対照ドアプレートは殺菌作用を示さなかった。対照と比較して曝露直後の表面における細菌のコロニー数に有意な減少が認められた(6 日目まで 90%超、P ≦ 0.01)。また、Surfaceskins のドアプレートでは、いずれの試験日でも対照と比較して腸球菌のコロニー数が有意に減少した(P ≦ 0.004)。Surfaceskins のドアプレートにおいて、(注入物の貯留が原因で)上部の方が細菌検出率が高いことを示す所見はなかった。
結論
Surfaceskins のドアプレートは、黄色ブドウ球菌、E. faecalis、大腸菌による表面汚染の軽減に有効であった。接触頻度の高いドア表面の微生物汚染および手指を介した微生物の伝播を軽減することによって、医療関連感染症などの感染症のリスクをうまく軽減できる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
表面のプレートを押して開閉するドアの場合、プレート板は接着機会が多く、汚染の温床になっていることは容易に想像できる。Surfaceskins は簡便に装着でき、1 週間に一度の交換でよいなどの利点を有するという。本邦は海外よりもプレート板タイプのドアは少なく、本法が実用的であるかもまだ不明であるが、今回の研究の発想の自由さは理解でき、手指衛生の向上には斬新なアイディアが求められるともいえる。

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