熱傷病棟におけるアウトブレイク時の多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)獲得の発生率、リスク因子および転帰
Incidence, risk factors, and outcome of multidrugresistant Acinetobacter baumannii acquisition during an outbreak in a burns unit
A.-L. Munier*, L. Biard, C. Rousseau, M. Legrand, M. Lafaurie, A. Lomont, J.-L. Donay, E. de Beaugrenier, R. Flicoteaux, A. Mebazaa, M. Mimoun, J.-M. Molina
*St Louis Hospital, France
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 226-233
背景
多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(multidrug-resistant Acinetobacter baumannii;MR-AB)は、熱傷病棟においてアウトブレイクを引き起こし得る。
目的
アウトブレイク時における MR-AB 保菌の発生率、リスク因子および転帰を研究すること。
方法
2014 年 4 月から 11 月に、パリの 1 熱傷病棟で前向き研究を実施した。患者と環境について週 1 回の監視培養を実施した。MR-AB 獲得、あるいは MR-AB 保菌のない退院または死亡が、競合イベントと考えられた。保菌のリスク因子を明らかにするため、Cox モデルを用いて単変量および多変量解析によりベースライン特性および時間依存性変数を検討した。複数部位塩基配列タイピング(MLST)を用いて MR-AB 分離株の遺伝子型を比較した。
結果
研究期間中に、熱傷病棟に 86 例が入院した。入院時に MR-AB 保菌が認められなかった 77 例のうち、25 例(32%)が MR-AB を獲得し、28 日目の累積発生率は 30%であった(95%信頼区間[CI]20 ~ 40)。MR-AB 獲得までの期間平均は 13 日(範囲5 ~ 34日)であった。多変量解析により、MR-AB 獲得のリスク因子は、皮膚移植手技の 2 回以上の実施(ハザード比[HR]2.97、95%CI 1.10 ~ 8.00、P = 0.032)および入院中の抗菌薬療法(HR 4.42、95%CI 1.19 ~ 16.4、P = 0.026)であった。MR-AB の主要な遺伝子型(ST2)は、患者および環境からの分離株のそれぞれ 94%および 92%で認められ、すべての分離株がblaOXA-23 遺伝子を保有していた。MR-AB 保菌により、入院期間が中央値で 12 日間延長した(HR 0.32、95%CI 0.17 ~ 0.58、P = 0.0002)。
結論
このアウトブレイク中に MR-AB 獲得の高い発生率が認められ、患者および環境からのほとんどの分離株は単一の遺伝子型に属していた。MR-AB 保菌は、皮膚移植手技、抗菌薬使用の増加、および長期入院と関連していた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
熱傷病棟入院患者の 3 分の 1 が MR-AB を獲得していたというのは、驚異である。リスク因子としての抗菌薬による選択圧や長期療養などの結果は従来から指摘されているものである。MR-AB は様々な環境に対応し長期間生存するため、一度アウトブレイクした場合徹底した環境整備が求められる。
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