基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の直腸保菌の迅速分子スクリーニング法としての Check-Direct ESBL Screen for BD MAX を評価した多施設前向き研究

2017.11.30

A multi-centre prospective evaluation of the Check-Direct ESBL Screen for BD MAX as a rapidmolecular screening method for extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae rectal carriage


T. Engel*, B.J. Slotboom, N. van Maarseveen, A.A. van Zwet, M.H. Nabuurs-Franssen, F. Hagen
*Canisius-Wilhelmina Hospital, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 247-253
目的
直腸スワブを直接分析する、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL-E)の定量的 PCR 法(qPCR)を、培養法に基づくプロトコルと比較し、両者の不一致を調べ、このアッセイを臨床現場でルーチンに適用する上での課題を明らかにした。副次的な目的は、qPCR のパフォーマンスを評価することであった。
材料および方法
オランダの教育病院 2 施設で、573 の直腸スワブを前向きに採取した。培養法およびCheck-MDR CT103XL(Check-Points 社)による追加検査を、Check-Direct ESBL Screen for BD MAX(Check-Points 社)と比較した(後者は、ESBL 遺伝子型 CTX-M1、CTX-M2、CTX-M9、および SHV2/5 を検出)。培養法に基づくプロトコル(Brilliance agar を使用)を、qPCR 法のパフォーマンス評価のゴールドスタンダードとした。
結果
573 の直腸スワブ検体のうち 74 検体(12.9%)が培養法陽性、84 検体(14.7%)が qPCR 法陽性であった。培養法陽性/qPCR 法陰性の不一致が 8 検体に、培養法陰性/qPCR 法陽性の不一致が 18 検体に認められた。培養法に対する qPCR 法の感度および特異度はそれぞれ、87.7%(95%信頼区間[CI]79.7 ~ 95.7)および 96.3%(95%CI 94.6 ~ 98.0)であった。
結論
Check-Direct ESBL Screen for the BD MAX は、容易に実施できる迅速分子診断法であり、直腸の ESBL-E 保菌のスクリーニングを有意に迅速化できる可能性がある。検査した検体の 4.5%で、培養法に基づくプロトコルと qPCR 法の不一致が認められた。qPCR 法導入に当たっての課題は、感度が不十分であること、現地の ESBL-E 遺伝子型を熟知する必要があること、および培養法陰性/qPCR 法陽性検体の解釈である。qPCR 法の感度不足は、blaTEM を分子標的に含めること、および検出限界を改善することで、最適化できるかもしれない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染症の検査、中でも原因微生物を迅速に特定することが適切な感染症診療の第 1 歩であり、そのための技術開発は重要さを増している。遺伝子検査のなかでも特定領域の増幅を行うプライマーの設計によってスクリーニングの対象が限定されるため、今後は次世代シークエンサーによる全ゲノムシークエンスに対する期待が高まっている。

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*Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical College, China

Journal of Hospital Infection (2022) 122, 96-107

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