過酸化水素および銀イオンを用いる自動環境消毒 対 次亜塩素酸ナトリウムを用いる用手環境消毒:多施設共同無作為化前後比較試験★

2017.10.26

Automatic environmental disinfection with hydrogen peroxide and silver ions versus manual environmental disinfection with sodium hypochlorite: a multicentre randomized before-and-after trial


D. Mosci*, G.W. Marmo, L. Sciolino, C. Zaccaro, R. Antonellini, L. Accogli, T. Lazzarotto, M. Mongardi, M.P. Landini
*Scientific Society of Infection Control Nurses, Italy
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 175-179
背景
自動消毒の新技術が開発されており、特定の機器により蒸気化した過酸化水素を関連する銀化合物とともに使用する方法もその一つである。
目的
中温菌汚染(訳者注20℃ ~ 40℃くらいの範囲で発育する菌で、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌など)の減少およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の存在の有無を評価する場合に、8%未満の過酸化水素および銀イオンを用いる自動消毒システムと 0.5%次亜塩素酸ナトリウムを用いる用手法との効果を比較すること。また、この 2 つの方法に要する時間を評価すること。
方法
本試験は、C. difficile 感染患者がこれまでに使用したさまざまな病棟において実施された多施設共同無作為化試験であった。患者の退室後、その病室を 2 つの消毒法の群に無作為に割り付けた。消毒前と後に、スワブを用いて表面から検体を採取した。スワブ検体を培養し、中温菌汚染の定量的検出および C. difficile の定性的検出を実施した。
結果
消毒前、過酸化水素および銀イオン消毒群の表面の 13%、次亜塩素酸ナトリウム消毒群の表面の 20%で、C. difficile 芽胞の存在が示された。消毒後、過酸化水素および銀イオン消毒群では C. difficile を含む検体は 0%(P < 0.001)、次亜塩素酸ナトリウム消毒群では 3%(P < 0.001)であった。この差は統計学的に有意ではなく、中温菌汚染の減少の差も統計学的に有意ではなかった。
結論
群間差は統計学的に有意ではなかったが、過酸化水素および銀イオンを用いる消毒は、操作者への依存が少ないため望ましい。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
近年、病室での自動消毒技術が開発され、その殺菌効果、安全性、信頼性への評価が多くの文献で報告されている。C. difficile (CD)による病室環境の汚染頻度については、20% ~ 100%と大きく異なるが、ナースコール、ベッドサイドテーブルの水平面など頻繁に手の触れる部分から検出される。CD の芽胞が 5 か月以上環境で生存するため、CD 感染患者の退院後に入室した患者が感染するリスクがあり、退院後の徹底した清掃は重要であるが、次亜塩素酸による環境清拭は個人差が大きいため、確実性に疑問が残る。本論文では、過酸化水素および銀イオンによる自動消毒システムの効果を次亜塩素酸による環境清拭を、CD 患者退室後の病室環境で比較したが、有意差は認められなかった。清拭後の CD 汚染が 3%と過去の報告と比較すると低値であり、次亜塩素酸による環境清拭が個々のスタッフで徹底されていたことが推測される。退室後の環境整備は、個人差のない標準的なレベルで実施されることが必要であり、機器による自動消毒はそのひとつである。

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