汚染された病室の消毒強化に用いる病室全体の紫外線照射システム 2 つの比較
Comparison of two whole-room ultraviolet irradiation systems for enhanced disinfection of contaminated hospital patient rooms
S. Ali*, S. Yui, M. Muzslay, A.P.R. Wilson
*University College London Hospitals, UK
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 180-184
背景
病室の終末消毒を補完するため、紫外線(UV)光消毒システムの使用がますます増加しつつある。しかし汚染物質の存在下、特にクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の芽胞に対して、効果は一貫していない。
目的
2 つの全病室UV 消毒システムの効果を、汚染の有無別に3 種類の病院感染病原体について調査すること。
方法
各システムについて、病室 6 室を用手的終末清掃後、UV 照射(強化消毒)した。次いで終末消毒の前後ならびにUV 照射後に患者環境15 カ所のスポットサンプリングを行い、表面汚染を生じている好気性菌のコロニー数を求めた。さらに室内の 5 カ所には、試験用細菌(106 cfu EMRSA-15 変異株 A、カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]とC. difficileの芽胞(105 cfu、027株)を軽度汚染物質(0.03%ウシ血清アルブミン[BSA])や重度汚染物質(10% BSA)、人工糞便(C. difficile のみ)に加えて作成したステンレス鋼円板(生物学的指標試験片)を設置し、各システムの効果を評価した。
結果
UV 消毒により、終末清掃後、14 カ所中 8 カ所(57%)および 14 カ所中 11 カ所(79%)において汚染が除去された。両システムとも、軽度汚染状態でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および肺炎桿菌は 4 ~ 5 log10程度減少した。重度汚染が存在する場合には、log10 減少値はより小さくなり、変動がみられた。C. difficile の芽胞は、軽度汚染において0.1 ~ 4.8 log10 ほど減少したが、重度汚染ではこれほどの減少は得られなかった。
結論
終末消毒は、UV 消毒前にすべての表面に対して実施すべきである。今後、各病室のレイアウトにおける最適な位置決め、および微生物の除去に十分なサイクル時間の決定を目的とした院内検証試験を考慮すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
病室への UV 照射は、一部を除いてなかなか実用化されてこなかった。患者在室時には使用できない、物陰になると効果がない、終末清掃後でないと使用しにくいといった理由からである。病院環境を介した耐性菌、C. difficile の伝播が大きく懸念される現在、清掃を補う意味において、UV 照射の実用性を再評価するのは意義のあることと思われる。
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