タイにおいて環境および臨床検体から分離されたステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)に関する分布と特性の評価
Distribution and characterization of Stenotrophomonas maltophilia isolates from environmental and clinical samples in Thailand
P. Paopradit*, K. Srinitiwarawong, N. Ingviya, K. Singkhamanan, V. Vuddhakul
*Prince of Songkla University, Thailand
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 185-191
背景
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は、特に悪性腫瘍に罹患または長期間入院している免疫不全患者において、重大な日和見病原体となっている。タイでは、この細菌に関する情報は明らかになっていない。
目的
タイ南部にある Songklanagarind Hospital において、環境および臨床検体由来のS. maltophilia について表現型と遺伝子型を調査すること。
方法
3 病棟のさまざまな環境由来サンプル、7 病棟の臨床サンプルから S. maltophilia の分離株を収集した。ディスク拡散法によって感受性試験を行うとともに、E-test によって最小発育阻止濃度(MIC)を決定した。分離株の遺伝子型はパルスフィールド・ゲル電気泳動により判定した。
結果
環境由来の S. maltophilia の大多数はシンクの排水管(67.5%)から、次いで飲用水(18.7%)、水道水(7.5%)から得られた。臨床分離株は主に喀痰から得られた(全分離株の 56.2%)。抗菌薬耐性は環境分離株よりも臨床分離株のほうに多かった。Co-trimoxazole への耐性は sul1 遺伝子の存在と関連していた。シプロフロキサシンおよび co-trimoxazole の MIC 値は、ディスク拡散法から得られた結果と密接に相関していた。DNA プロファイル解析により、高度な多様性を有する 7 クラスターが分離株中に認められた。
結論
環境分離株と臨床分離株には遺伝子型の関連性は認められなかった。したがって本菌の獲得自体は病院外で生じたのかもしれない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
これまでS. maltophiliaの臨床分離株および環境由来株は非常に多様性に富んでいることが、各国からの報告で明らかとなっている。既に MLST 法も開発されており、国際的な多施設検討と、有意なクローンが存在した場合の病原性や伝播性に関する特性の追求が望まれる。
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