イタリアの腎臓病病棟の透析用水処理設備の微生物学的および化学的汚染の評価と制御★

2017.10.26

Evaluation and control of microbial and chemical contamination in dialysis water plants of Italian nephrology wards


M. Totaro*, B. Casini, P. Valentini, M. Miccoli, S. Giorgi, A. Porretta, G. Privitera, P.L. Lopalco, A. Baggiani
*University of Pisa, Italy
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 169-174
背景
血液透析を受けている患者は大量の透析液に曝露している。イタリア腎臓病学会は、患者の安全性を確保するための指針および透析用水・透析液の微生物学的水質基準を発表した。
目的
微生物学的および化学的ハザードを特定し、透析用水設備の消毒処理の質を評価すること。
方法
2015 年から 2016 年、イタリアにある病院の透析室(透析床数計 162 床)の水道設備および透析用水処理設備(閉鎖ループ配管およびオンラインモニター)から毎月試料を採取し、イタリア腎臓病学会の指針で規定されたパラメータを測定した。塩素化された飲料水を逆浸透により脱塩素処理した後、閉鎖ループに配給し、すべてのオンラインモニターで情報を収集した。すべての透析用水処理設備で過酢酸による消毒を毎月実施した。
結果
24 か月間の研究実施期間中、透析用水処理設備 9 カ所中 7 カ所(78%)は、調査したすべてのパラメータの結果が陰性であった。2015 年 1 月から 3 月に透析用水処理設備 1 カ所の閉鎖ループでバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)による汚染が検出された。2016 年 3 月から 5 月には、別の透析用水処理設備 1 カ所の閉鎖ループで緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が分離された。これらの微生物汚染は、次亜塩素酸ナトリウムおよび過酢酸によるショック消毒(訳者注:通常は月 1 回であるが、汚染時に実施する臨時消毒で、隔週毎に計 3 回、塩素消毒と過酢酸による消毒をおこなう)に続く水洗浄で根絶された。
結論
以上の結果から、透析用水の化学的および物理的消毒方法の重要性が裏付けられた。透析室が有する水処理設備において制御策を継続的に実施することによって、すべての透析患者の微生物リスクが確実に軽減される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
この数年で世界での血液透析患者は増加し、透析膜経由で曝露される水の量は毎週 400 ~ 600 L とされている。透析患者は糖尿病、循環器疾患、高血圧などの合併症を併発しており、副次的な障害が起こりやすいため、透析のための水の品質の担保は重要であるが、その認知は十分とは言えない。病院では日和見病原体が、透析液製造機や透析器などの水を使用する設備や機器で増殖することがある。大腸菌、緑膿菌、アシネトバクター、セパシアなどのグラム陰性桿菌や真菌、時に原虫が透析機器に定着増殖し、バイオフィルムを形成するため消毒剤に抵抗性である。また、エンドトキシンは炎症性サイトカインを誘導し急性症状を引き起こし、透析関連の合併症を引き起こす。透析用の水の品質管理は極めて重要である。

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