高度に訓練されたスタッフ配置の十分な環境においても労働量は手指衛生に影響を及ぼす:1 年間連日 24 時間にわたる前向き観察研究
Workload even affects hand hygiene in a highly trained and well-staffed setting: a prospective 365/7/24 observational study
S. Scheithauer*, B. Batzer, M. Dangel, J. Passweg, A. Widmer
*University Medicine Goettingen, Germany
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 11-16
序論
これまでに、手指衛生の遵守率は満足できるものではないと示されることが多く、自己報告によるその一般的な理由は労働量である。労働量と遵守率の比較を行ったこれまでの研究は、労働量を正確に測定しておらず、1 日の特定の時間に焦点を当てていた。本研究の目的は、手指衛生の遵守率と労働量との関連を、いずれも電子的に 1 年間連日 24 時間にわたり測定(主要エンドポイント)をして検討することであった。さらに、遵守率を測定するために一般的に用いられている方法(手指消毒薬の使用、直接観察)の質(副次的エンドポイント)を検討した。
材料および方法
スイスのバーゼル大学病院の幹細胞移植病棟において 1 年間にわたり、電子的に測定した手指衛生の遵守率(手指洗浄活動/手指衛生機会)と、電子的に測定した労働量(看護活動/看護時間)との相関を検討した。世界保健機関(WHO)による手指衛生の 5 つのタイミングに従って、手指洗浄活動および手指洗浄活動を要する手技を、電子記録が残るディスペンサーおよび電子記録を用いて連続的に(1 年間連日 24 時間)記録し、これらに基づいて遵守率を算出した。手指消毒剤の使用量は1 年間にわたる使用記録を用いて算出し、手指衛生機会約1,800件について直接観察を実施した。
結果
研究期間中に、208,184 件の手指洗浄活動が実施され、患者日あたり手指洗浄活動は 57 件(標準偏差[SD]10)であった。電子記録により算出した遵守率は 24% ~ 66%(平均 42.39%[SD 8%])の範囲であった。労働量が多くなるほど遵守率は低下した(R = -0.411、P < 0.001)。患者日あたり手指洗浄活動(R = -0.037)、手指消毒剤使用量(患者日あたり平均 160 mL)および観察された遵守率(95%、手指洗浄活動 1,734 件/手指衛生機会 1,813 件)には、労働量との関連は認められなかった。
結論
算出した遵守率には、看護師の労働量との逆相関が認められた。患者日あたり手指洗浄活動、観察により算出した遵守率、および消毒剤の使用量を、遵守率の代理指標として用いたが、実際の遵守率とは相関しておらず、したがって用いる場合は注意すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
人員と労務の関係は以前より指摘されており、本研究はその焼き直しである。過大労務負荷により手指衛生が破綻するのは、既知の事実でありどの業務量を基準に人員配置あるいは臨時的な支援者の派遣などで人員補強を行わない場合は感染伝播のリスクは高まる。
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