香港の地域病院における肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)菌血症の臨床的予測因子および転帰
Clinical predictors and outcomes of Klebsiella pneumoniae bacteraemia in a regional hospital in Hong Kong
M.Y. Man*, H.P. Shum, Y.H. Chan, K.C. Chan, W.W. Yan, R.A. Lee, S.K.P. Lau
*Pamela Youde Nethersole Eastern Hospital, China
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 35-41
背景
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症は、高い罹病率および死亡率と関連する。多剤耐性肺炎桿菌、特に基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌は、世界中で流行している。
目的
集中治療室および一般病棟の肺炎桿菌菌血症患者の臨床的特徴および転帰を評価すること。
方法
2009 年 1 月 1 日から 2016 年 6 月 30 日までの 7.5 年間に香港の地域病院に入院した、成人の肺炎桿菌菌血症患者を含めた。患者背景因子、臨床的特徴、微生物学的特徴、および転帰を分析した。
結果
患者 853 例のうち、178 例(20.9%)が集中治療を要し、176 例(20.6%)が入院後 30 日以内に死亡した。30 日生存者は、より若年で(P < 0.001)、疾患の重症度がより軽度で(Sequential Organ Failure Assessment スコアで測定、P < 0.001)、肝胆道由来の敗血症(P < 0.001)または尿路由来の敗血症(P < 0.001)を呈し、敗血症性ショックをきたした割合が少なく(P = 0.013)、侵襲性の臓器支持療法を受けている割合が少なく(P < 0.001)、適切な経験的抗菌薬投与を受けている割合が多かった(P < 0.001)。Cox 回帰分析では、気道感染症(ハザード比[HR]2.99、95%信頼区間[CI]2.061 ~ 4.337、P ≦ 0.001)、消化管感染症(肝胆道系を除く)(HR 2.763、95%CI 1.761 ~ 4.337、P ≦ 0.001)、機械換気(HR 2.202、95%CI 1.506 ~ 3.221、P ≦ 0.001)、内科への入院(HR 1.830、95%CI 1.253 ~ 2.672、P = 0.002)、不適切な経験的抗菌薬投与(HR 1.716、95%CI 1.267 ~ 2.324、P ≦ 0.001)、女性であること(HR 1.699、95%CI 1.251 ~ 2.307、P < 0.001)、65 歳を超える(HR 1.692、95%CI 1.160 ~ 2.467、P = 0.006)、および固形腫瘍の存在(HR 1.457、95%CI 1.056 ~ 2.009、P = 0.022)が、30 日死亡の独立危険因子であることが示された。予想に反して、糖尿病は高い 30 日生存率と関連した(P = 0.002)。計 102 例(12.0%)が ESBL 産生株による感染症であったが、これは高い 30 日死亡率と関連しなかった。
結論
肺炎桿菌菌血症は高い 30 日死亡率と関連する。感染部位、患者の併存疾患、および適切な経験的抗菌薬投与は、患者の転帰の重要な予測因子である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
大腸菌と比べると頻度の少ない肺炎桿菌による菌血症に関する香港における後向き研究である。1700 床(!)の大規模病院で 7 年間で 853 例という症例数には驚きである。アジアを中心に、過粘調性を示す強毒性の肺炎桿菌が検出されている。20.6%という比較的高い 30 日死亡率が示されているが、そのうち過粘調性の肺炎桿菌の割合などは明らかにされていない。なお ESBL 産生菌の割合は 12.0%であったが、カルバペネマーゼ産生株が 0 であったというのも意外である。
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