老年科病院における尿路感染症のリスク因子★★
Risk factors for urinary tract infections in geriatric hospitals
R. Girard*, S. Gaujard, V. Pergay, P. Pornon, G. Martin-Gaujard, L. Bourguignon for the UTIC Group
*Hospices Civils de Lyon, France
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 74-78
背景
尿路感染症(UTI)は、老年科病棟で最も高頻度に発生する院内感染症である。感染のリスク因子の把握が予防戦略の特定に役立つと考えられる。
目的
高齢患者における UTI のリスク因子の同定。
方法
3 つの前向きコホートの後向き解析。2009 年、2012 年、および 2015 年の 6 月 1 日から 28 日に老年科病棟を受診または入院した入院患者全員を対象とし、退院または該当する年の 6 月 30 日まで追跡調査を実施した。それぞれの患者について、入院の種類および入院日、カテーテルの種類および挿入日、リスク因子、院内 UTI に関するデータを収集した。SPSS ソフトウェアを用いて単変量および多変量解析(Cox モデル)を実施した。
結果
合計 4,669 例の患者が組み込まれ、合計 83,068 日間の追跡調査が実施された。189 件の院内 UTI が発生した(4.0%の患者)。院内 UTI の発生頻度は、女性患者、リハビリテーション科病棟患者、免疫低下患者、急性尿閉、残尿または過去 6 か月間に尿路感染症の既往がある患者、および介護度の高い患者で有意に高く、カテーテル使用患者でも有意に高かった(Z 検定、P < 0.001)。また、院内 UTI の発生頻度は、間歇式、留置、または恥骨上カテーテルの使用患者で有意に高く、急性/亜急性期病棟またはリハビリテーション科病棟、女性、免疫低下患者、過去に UTI の既往がある患者でも高かったが、認知症患者では低かった。
結論
院内 UTI の発生は、カテーテル使用者およびカテーテル非使用者の双方において重要な問題であり、予防プログラムの範囲を拡大し、カテーテル非使用者も対象に含めるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
老年科病棟で多い院内感染症は、頻度的に尿路感染であり、ときに菌血症や腎不全などの合併症を引き起こすため,予防対策は重要である。現在、多くの医療施設では尿道留置カテーテルによる尿路感染症(CAUTI)を対象にサーベイランスが実施されているが、本論文では老年科病棟におけるカテーテル非留置患者にも尿路感染症(UTI)の対象範囲をひろげ、調査した。カテーテル非使用者での UTI は、しばしば見逃されがちであるが、今後上記リスク因子に該当する患者に対しても UTI 発生防止のための戦略が必要である。
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