感染制御活動の経済的評価★★
Economic evaluation of infection control activities
T. Seko*, T. Tachi, N. Kawashima, T. Maeda, M. Yasuda, Y. Noguchi, H. Teramachi
*Nishimino Kosei Hospital, Japan
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 371-376
背景
薬剤耐性菌による医療関連感染症は患者の予後に影響を与える。日本の医療機関における感染制御活動ではこうした細菌からの脅威にますます焦点を当てるようになっている。
目的
感染制御活動に必要な消耗品費用および人件費を含む全費用分析を実施すること。
方法
日本の西美濃厚生病院において感染制御チーム(ICT)が実施する感染制御活動の費用を 2013 年 1 月から 2015 年 12 月まで調査した。感染制御活動の評価指標としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)検出率を用いた。各介入の費用対効果比を算出した。
結果
消耗品費用および人件費は経時的に増加し、総費用に対する人件費の比も経時的に上昇した。しかし、介入の費用対効果比は 2014 年の 164,177 円から 2015 年の 57,989 円となり、低下したことが明らかになった。消耗品の量のみならず ICT の時間にも増加があり、感染制御の経済効率改善の可能性が示唆された。
結論
消耗品の量および ICT の時間投入を増やすことで、感染制御の経済効率の改善に役立つ可能性がある。本研究により、感染制御の経済効率改善の可能性が示唆されている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本の市中病院における ICT 活動に対する費用対効果を明らかにした論文である。手袋、プラスチックエプロン、ガウン、速乾性手指消毒を消耗品費用として、一方 ICT の人件費(円/時間)は、医師 6,606 円、薬剤師 2,069 円、看護師 1,885 円、臨床検査技師 1,692 円とし計算され、ICT ラウンドにかかる時間は約 30 分から 2 時間に増加している。ICT 活動の時間を増やすことで MRSA 検出率の低下やカルバペネム系薬の AUD が減少することが示された重要な知見である。ICT の感染対策への貢献度を評価するひとつの指標として参考になる。平成 30 年度には診療報酬改訂があり、このときに新たに ICT 活動にさらなる負荷がかかる可能性があり、市中病院といえども ICN 以外に専従の職員(医師、薬剤師、検査技師等)が必要となってくるかもしれない。
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