病院内接触予防策と救急部滞在時間の関連★

2017.07.31

Association of hospital contact precaution policies with emergency department admission time


K. Kotkowski*, R.T. Ellison III, C. Barysauskas, B. Barton, J. Allison, D. Mack, R.W. Finberg, M. Reznek
*University of Massachusetts Medical School, USA
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 244-249
背景
接触予防は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)の院内伝播を減少させるためのストラテジーとして、広く受け入れられている。しかし、これらの接触予防策は、意図せぬ有害な影響を患者にもたらす場合がある。
目的
病院全体の接触予防策の修正が、救急部滞在時間に及ぼす影響を評価すること。
方法
研究期間中に、病院は接触予防に関する方針を変更し、MRSA または VRE の保菌・感染歴を有するすべての患者に接触予防策をとることを求めるものから、病原体で環境を汚染する可能性の高い臨床症状を呈する患者に限定するものとした。2 つのキャンパスを持つ 1 病院で、この変更の前後各 1 年間の成人の救急部滞在時間について、分割時系列解析を行った。主要評価項目は、入院の決定から入院病床への到着までの時間と定義した救急部滞在時間とし、MRSA または VRE 患者とその他の全患者とで比較した。同期間に院内 MRSA・VRE 獲得率を評価し、既報に示した。
結果
一方のキャンパスでは、滞在時間は直ちに、MRSA 患者で 161 分、VRE 患者で 135 分減少し(それぞれ P = 0.008、P = 0.003)、ともに研究終了時まで減少が維持された。もう一方のキャンパスでは、滞在時間に有意な変化はなかった。
結論
MRSA および VRE に関する接触予防策の要件を変更することで、MRSA および VRE の院内獲得率を有意に変化させることなく、救急部滞在時間の改善につながる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
接触予防策の実施と要する時間について検討した論文である。MRSA、VRE を有する患者すべてに接触予防策を行う事と、環境を汚染させる可能性がある場合のみ行う事で、MRSA、VRE の院内獲得率を増加させることなく、ER 滞在時間に差があったとしている。予防策が必要かどうか判断すること、つまり、標準予防策がスタッフ全体にどれだけ確実に理解され、実施されているかが、このポリシー変更の鍵となる。

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