医療環境における院内伝播の可能性を伴う肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生腸内細菌科細菌獲得および感染のリスク因子:症例対照研究★
Risk factors for KPC-producing Enterobacteriaceae acquisition and infection in a healthcare setting with possible local transmission: a case–control study
K.M. Cronin*, Y.S. Poy Lorenzo, M.E. Olenski, A.E. Bloch, K. Visvanathan, M.J. Waters, K.L. Buising
*St Vincent’s Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 111-115
背景
オーストラリアにおける肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生肺炎桿菌の報告はこれまでまれであり、検出率の高い国々からの旅行者から散発的に国内に入ってきた症例であった。
目的
研究対象施設において、オーストラリアで初の KPC 産生肺炎桿菌アウトブレイクを報告した。本研究の目的は、マッチド症例対照研究を行って、KPC 産生肺炎桿菌の保菌および感染のリスク因子を同定することであった。
方法
本研究には、2012 年 1 月から 2015 年 9 月にわたり KPC 産生肺炎桿菌の保菌または感染を有する全入院患者を組み入れた。
結果
KPC 産生腸内細菌科細菌(KPC 産生肺炎桿菌の 31 症例を含む)の 34 症例を対照 136 例とマッチさせた。KPC 産生肺炎桿菌獲得と関連する変数には、過去 12 か月間における入院期間 28 日超、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)保菌の既往、中心静脈カテーテル(CVC)、消化器疾患および侵襲的処置が含まれた。広域スペクトル抗菌薬への曝露も、有意なリスク因子であることが分かった。多変量解析により、KPC 産生肺炎桿菌獲得と関連した独立した 3 つの因子は、過去 12 か月間における入院期間 28 日超(オッズ比[OR]23.6、95%信頼区間[CI]4.9 ~ 113.3)、CVC の留置(OR 15.4、95%CI 2.7 ~ 86.9)、および VRE 保菌の既往(OR 6.0、95%CI 1.6 ~ 23.2)であった。海外渡航歴を有した患者はごく少数であった。
結論
本研究から、院内アウトブレイクの場合、患者が長期間にわたり院内曝露をするほど KPC 産生肺炎桿菌を獲得する割合が高くなることが示され、KPC 産生肺炎桿菌獲得のリスク因子は VRE 保菌のリスク因子と共通である可能性が示唆された。海外渡航者を対象とした院内スクリーニング戦略は、多くの症例を見逃す可能性がある。本研究の結果は、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌に対するスクリーニング方針にとって有用な情報となるであろう。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
KPC 産生肺炎桿菌も VRE も腸内に潜むという観点からは共通で有り、リスク因子が類似している点も納得がいく。在院日数の長期化が保菌のリスクであるのはおそらくその他の耐性菌に共通する因子であろう。
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