中国における医療関連感染の負担:東莞市の 2015 年点有病率調査の結果

2017.06.29

Burden of healthcare-associated infections in China: results of the 2015 point prevalence survey in Dong Guan City


J. Wang*, J. Hu, S. Harbarth, D. Pittet, M. Zhou, W. Zingg
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 132-138
背景
医療関連感染(HCAI)は、健康への重大な脅威である。中国での HCAI および抗菌薬の使用に関するデータは、英語文献ではほとんど報告されていない。
目的
東莞市における 2015 年点有病率調査(PPS)で得られた HCAI 有病率および抗菌薬の使用状況を記述し、考察すること。
方法
2015年、Dong Guan (City) Nosocomial Infection Control and Quality Improvement Centre は、東莞市の 2 次および 3 次病院において、年 1 回の PPS を実施した。調査は 1 暦日に行った。
結果
37 の 2 次病院および 14 の 3 次病院が、それぞれ 9,679 例および 11,641 例の患者を評価した。計 616 例の患者が 681 件の HCAI を有した。2 次病院、3 次病院、および全病院におけるプールした HCAI 有病率(95%信頼区間)はそれぞれ、2.3%(2.0 ~ 2.6)、3.4%(3.0 ~ 3.7)、および 2.9%(2.6 ~ 3.1)であった。下気道感染症、尿路感染症(UTI)、手術部位感染(SSI)、および血流感染を合わせると、HCAI の 73.1%を占めた。下気道感染症は、最も多く診断された HCAI であり(35.5%)、次いで UTI(17.0%)、SSI(15.1%)であった。グラム陰性菌が最も多く分離され(68.1%)、次いでグラム陽性菌(19.3%)、真菌(10.9%)であった。最も多くみられた病原菌は大腸菌(Escherichia coli)で(14.8%)、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)は10.9%を占めた。計 34.8%の患者が、1 剤以上の抗菌薬投与を受けていた。
結論
プールした有病率は、最近の中国での他の研究でみられた範囲内であったが、欧州および米国での先行報告と比較すると低かった。治療目的での抗菌薬の使用は、欧州と同様であったが、中国での先行報告よりも少なく、また米国よりも少なかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
有病率調査(PPS;point prevalence survey)は、ある時点での感染症患者、抗菌薬使用状況、デバイス使用状況などを複数の施設や地域で一斉に調査し、過去のデータや施設・地域間で比較する手法である。Snap Shot survey ともよばれる。一定期間継続してデータを集める通常のサーベイランスに比較し、調査者の負担が軽くなることがメリットである。

同カテゴリの記事

2016.06.23

Prevention and control of carbapenemase-producing organisms at a regional burns centre

2012.04.29

Laboratory-acquired brucellosis in Turkey

2022.11.12
Prevalence of enterococcal groin colonization in patients undergoing cardiac interventions: challenging antimicrobial prophylaxis with cephalosporins in patients undergoing transcatheter aortic valve replacement

D. Widmer*, A.F. Widmer, R. Jeger, M. Dangel, S. Stortecky, R. Frei, A. Conen
*University Hospital Basel, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2022) 129, 198-202


2013.03.30

Need for a comprehensive, consistently applied national hepatitis B vaccination policy for healthcare workers in higher educational institutions: a case study from South Africa

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ