スペインの病院における OXA-48 産生多剤耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)分離株の拡散および臨床的意義
Dissemination and clinical implications of multidrugresistant Klebsiella pneumoniae isolates producing OXA-48 in a Spanish hospital
A. Madueño*, J. González García, S. Fernández-Romero, J. Oteo, M. Lecuona
*Hospital Universitario de Canarias, Spain
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 116-122
背景
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)分離株による医療関連感染症は増加しつつあり、患者を治療するために現在利用可能な効果的な抗菌薬はほとんどない。
目的
2013 年 10 月から 2015 年 12 月の期間について、スペインの 3 次病院における OXA-48 産生肺炎桿菌の獲得および拡散にみられる疫学、分子的機序、臨床的特徴および転帰を評価すること。
方法
臨床サンプルにおける OXA-48 産生肺炎桿菌獲得患者の臨床的、人口統計学的、および微生物学的データを医療記録から収集した。カルバペネマーゼ遺伝子を PCR で検出した。遺伝的関係を、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および複数部位塩基配列タイピング(MLST)により明らかにした。
結果
全体で、臨床サンプルにおいて OXA-48 産生肺炎桿菌獲得エピソードが 116 件特定された。最も高頻度にみられた種類の感染症は、尿路感染症(N = 43、42%)、2 次血流感染症(N = 18、17%)、および手術部位感染症(N = 17、17%)であった。感染患者の 4 分の 1 超(28%)が院内で死亡した。感染患者(N = 90、78%)において、感染症の大部分は院内感染症(N = 70、88%)に分類された。多剤耐性を示した OXA-48 産生肺炎桿菌分離株が多く、コリスチン(86%)、ゲンタマイシン(69%)およびアミカシン(59%)に対する感受性が最も高かった。ほとんどの分離株(87%)は、主要クラスターに含まれていた。分離株 7 株(N = 8、88%)は同一のアレルプロファイルを示し、ST15 と関連していた。クラスター P8 に含まれた分離株のみが ST29 と関連した。本研究の結果から、当院における主要クローンである ST15 による OXA-48 産生肺炎桿菌の高い拡散率が確認された。OXA-48 産生肺炎桿菌感染症は、高い死亡率と関連し、主として院内感染症であった。
結論
本研究は、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の拡散を制御する上で、積極的サーベイランスプログラム、特に再入院に焦点を当てたプログラムの重要性を強調している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
近年、多剤耐性菌の院内感染型の特徴を認知するため MLST 型が多用されている。施設内伝播している MLST 型が地域的な院内流行株なのかを調査し、現場対応をする必要がある。施設内で広がりやすい株(院内感染型)の迷入は病院にとっての危機である。
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