ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)医療関連感染症:2 つの主な病原遺伝的系統の存在★
Stenotrophomonas maltophilia healthcare-associated infections: identification of two main pathogenic genetic backgrounds C. Corlouer*, B. Lamy, M. Desroches, J. Ramos-Vivas, E. Mehiri-Zghal, O. Lemenand, J-M. Delarbre, J-W. Decousser, on behalf of the Collège de Bactériologie-Virologie-Hygiène des Hôpitaux de France *University Hospital Henri Mondor, France Journal of Hospital Infection (2017) 96, 183-188
背景
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は、医療関連感染症の原因となる日和見多剤耐性菌である。院内感染制御戦略および保菌者や環境中のリザーバーの管理については依然として異論がある。
目的
入院中の感染患者における S. maltophilia 株の集団構造を明らかにし、より高水準の感染制御策が必要となる、高病原性が推定されるサブポピュレーションを同定すること。
方法
地理的に離れた 18 病院の様々な臨床材料から得られた多様なヒト分離株 83 株の表現型、遺伝子型の特徴を multi-locus sequence typing(MLST)法を用いて明らかにした。
結果
優勢な配列型(ST)も、増加している配列型も、いずれも同定されなかった。型別可能であった 80 株のうち、これまで報告された ST であったのは 29%のみであり、特に ST5(6 株)と ST4/26/31(それぞれ 2 株)であった。ST の分布および、MLST に用いた遺伝子を連結した塩基配列に基づいて作成した系統樹では、地理的あるいは臨床的な起源を明らかにしたり、抗菌薬感受性によるクラスターを説明したりすることはできなかった。今回の80 株に、MLST データベースに掲載されている 173 株の ST プロファイルを加えて系統樹を作成したところ、S. maltophilia には高い遺伝的多様性があること、そしてこれまでに報告された genogroup の系統関係と同様の傾向を示すこと、さらに 41%(80 株中 33 株)を占めることから分かるように genogroup 6 が優勢であることが確認された。予想外にも、genogroup 2 は 2 番目に優勢で、株の 16%(80 株中 13 株)はこの genogroup に属していた。genogroup 2と6は、呼吸器感染患者由来株の 57%(35 株中 20 株)、嚢胞性線維症患者由来株の 75%(12 株中 9 株)を占めていた。
結論
MLST の結果にさらにデータベースの配列を加えることで、医療関連感染症の原因となっていた株の中で、一部の genogroup が多く出現していたことが確認された。患者や環境のリザーバーから分離された多数の病原性株に対し、選択的に感染制御策を実施するには、株のgenogroup を決定することが推奨される。
監訳者コメント:
S. maltophiliaが遺伝的多様性に富んでいることは,これまでの分子疫学解析でも示されてきたが、今回フランス・チュニジアを中心に行われた本研究でも、ほぼそれを示す結果となった。しかしながら genogroup 単位でみれば優勢のグループが存在することが追加の解析で明らかとなり、特にこの 2 つのグループについて、病原性や伝播性など詳細な解析を行うとともに、有効な感染制御策を検討していく必要性があるといえる。
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