市中発症型医療関連血流感染症に特有の特徴:日本における血流感染症の多施設共同前向きサーベイランス研究★★
Unique characteristics of community-onset healthcare-associated bloodstream infections: a multi-centre prospective surveillance study of bloodstream infections in Japan
N. Takeshita*, I. Kawamura, H. Kurai, H. Araoka, A. Yoneyama, T. Fujita, Y. Ainoda, R. Hase, N. Hosokawa, H. Shimanuki, N. Sekiya, N. Ohmagari
*National Centre for Global Health and Medicine, Japan
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 29-34
背景
血流感染症(BSI)の分析は、その診断、治療および予防にとって重要である。しかし、日本で利用可能なデータは限られている。
目的
日本における菌血症患者の特徴を検討すること。
方法
本研究は、2012 年 10 月から 2013 年 9 月にかけて日本の病院 5 施設で実施した。血液培養陽性の全症例について、臨床、人口統計学的、微生物学的、および転帰データを分析した。
結果
合計で BSI 症例 3,206 例を分析した。このうち、551 例が市中発症型医療関連 BSI、1,891 例が病院獲得型 BSI、764 例が市中獲得型 BSIであった。7 日および 30 日死亡率は、市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI の患者のほうが市中獲得型 BSI の患者より高かった。7 日死亡率のオッズ比(OR)は、市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI でそれぞれ 2.56(95%信頼区間[CI]1.48 ~ 4.41)および 2.63(95%CI 1.64 ~ 4.19)であった。30 日死亡率の OR は、市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI でそれぞれ 2.41(95%CI 1.63 ~ 3.57)および 3.31(95%CI 2.39 ~ 4.59)であった。中心ライン関連 BSI が 499 例(15.2%)、末梢ライン関連 BSI が 163 例(5.0%)であった。主要な病原体には、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(staphylococci)(N =736、23.0%)、大腸菌(Escherichia coli)(N = 581、18.1%)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(N = 294、9.2%)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(N = 263、8.2%)が含まれた。大腸菌による 30 日死亡率は、病院獲得 BSI 患者(22.3%)のほうが市中発症型医療関連 BSI(12.3%)および市中獲得型 BSI(3.4%)の患者より高かった。肺炎桿菌による 30 日死亡率は、病院獲得型 BSI(22.0%)および市中発症型医療関連 BSI(22.7%)の患者のほうが市中獲得型 BSI(7.8%)患者より高かった。
結論
市中発症型医療関連 BSI および病院獲得型 BSI による死亡率は、市中獲得型 BSI より高かった。大腸菌および肺炎桿菌に関連した BSI の予後は、菌血症の種類によって異なっていた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
国内 5 施設の血液培養陽性例を日本の感染症医が解析した論文である。市中発症型医療関連血流感染(入院後 48 時間未満)、病院獲得型血流感染(入院後 48 時間以降)、市中獲得型血流感染(入院 48 時間未満、医療関連リスク要因なし)の 3 群に分け、その特徴を解析している。特に起炎菌の差に関する解析が興味深かった。
同カテゴリの記事
Costs of QuantiFERONR-TB Gold versus tuberculin skin test in Spanish healthcare workers
Barriers to uptake of antimicrobial advice in a UK hospital: a qualitative study
Epidemiological investigation after hospitalising a case with pandrug-resistant Acinetobacter baumannii infection
Glycerol significantly decreases the three hour efficacy of alcohol-based surgical hand rubs
Alginate films containing Lactobacillus plantarum as wound dressing for prevention of burn infection