癌患者においてクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)腸炎の管理にチゲサイクリンを使用することおよびブレイクスルー感染症のケースシリーズ

2017.04.30

Use of tigecycline for the management of Clostridium difficile colitis in oncology patients and case series of breakthrough infections


B.J. Brinda*, Y. Pasikhova, R.E. Quilitz, C.M. Thai, J.N. Greene
*Indiana University Health, USA
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 426-432
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)は、成人における院内下痢症の最も頻度の高い原因である。癌患者は特に、CDI のリスクが高い。CDI の治療、特に癌患者および血液悪性腫瘍患者にチゲサイクリンを使用することに関する臨床データは限られている。
目的
大学附属癌センターの癌患者を対象とし、CDI 治療薬としてのチゲサイクリンの特徴を明らかにすること。
方法
本研究は、大学附属癌センターの癌患者を対象とした CDI 治療目的でのチゲサイクリンを評価する後向き単施設単一群医療記録調査であった。
結果
本患者群(66 例)での CDI 診断年齢中央値は 65 歳(範囲 16 ~ 84 歳)で、大多数は悪性固形腫瘍患者であった。患者の 56%は重症 CDI であり、そのうち 70.3%が重症かつ複雑性の CDI に分類された。チゲサイクリン療法開始までの期間中央値は 2 日(平均 3.83 日)、チゲサイクリン投与回数中央値は 13 回(範囲 1 ~ 50 回)であった。CDI 以外のブレイクスルー感染症が 12 件認められ、CDI 以外の適応に対してチゲサイクリン投与中に 4 例が CDI を発症した。死亡率は 18%、再発率は 15.2%であった。
結論
過去のデータと比較すると、チゲサイクリンは CDI を発症した癌患者の転帰に明白なベネフィットをもたらさなかった。さらに、CDI 以外の適応に対してチゲサイクリン投与を受けた患者にブレイクスルー CDI が数件認められた。CDI 治療薬としてのチゲサイクリンの使用を検証するには、さらなる前向き研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
チゲサイクリンは in vitroC. difficile に対する活性を持ち、重症の CDI で他剤に付加して投与した場合に、治癒率が高かったとする報告がある。欧州臨床微生物感染症学会はそのガイドラインで、重症例や、経口治療が無効であった例にチゲサイクリンの使用を考慮するとしているが、チゲサイクリンの有用性に疑問を呈する報告もあった。本検討は悪性腫瘍患者が対象ではあるが、チゲサイクリン投与中に CDI のブレイクスルー感染症を生じており、残念ながら有用性は見いだせなかった。

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