病院感染型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染に抗菌薬および症例への曝露が重症度とは独立して及ぼす影響

2017.04.30

Influence of antibiotics and case exposure on hospital-acquired Clostridium difficile infection independent of illness severity


A.J. Forster*, N. Daneman, C. van Walraven
*University of Ottawa, Canada
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 400-409
背景
抗菌薬への曝露と病院感染型クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連感染(CDI)のリスクの関連に関する先行研究では、患者重症度および競合リスクが十分に説明されていない。
目的
病院感染型 CDI のリスクに介入が及ぼしうる影響を明らかにすること。
方法
2004 年から 2014 年の間に教育病院に 2 日間を超えて入院したすべての成人患者を含めた。すべての抗菌薬および CDI 症例への曝露を同定した。患者を、退院、死亡、または病院感染型 CDI の発生(入院後 2日間以降の無形便の毒素検査陽性と定義した)まで追跡した。時間依存性共変量を含む多変量比例ハザード競合リスクモデルを用い、患者重症度は Escobar モデルを用いて説明した。
結果
全体で 208,104 例の患者を研究に含めた。病院感染型 CDI のリスクは 1,000 患者・日あたり 0.46 件で、研究期間中に有意に減少した。院内死亡リスクの 5 パーセンタイル値(0.02%)と比較して、院内死亡リスク 50%の患者の病院感染型 CDI の調整ハザード比(HR)は 5.5 であった。一部の抗菌薬への曝露は病院感染型 CDI のリスクを有意に増加させ、リスクが最も高かったのはカルバペネム系薬(1 週間の連続曝露後の調整HR 1.47)およびバンコマイシン静脈内投与(調整HR 1.53)であった。病室での曝露について、新たに CDI と診断された他の患者との同室は、その後の疾患リスクを有意に増加させた(CDI の診断日における調整HR 1.16)。
結論
病院感染型 CDI の主要な決定因子は、患者重症度であった。抗菌薬および他の CDI 患者への曝露はどちらも、後の病院感染型 CDI のリスクを有意に増加させたが、このリスクは患者重症度に比べて小さいものであった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
11 年間、208,104 例の入院患者を対象とした比較的大規模な研究である。従来から CDI の最大のリスク因子は抗菌薬曝露とされていたが本研究では CDI の最大のリスク因子を患者の基礎疾患の重症度と報告している。また他の CDI 患者との接触の影響は低く、CDI 患者の隔離の効果は小さいのではないかと結論している。こういった研究結果は研究によって様々であり、本研究によって CDI 患者に接触予防策が不要であると結論するのは早急である。

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