Multi-spacer typing は壊死性腸炎の症例シリーズにおいて便検体から分離されたクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)株のクローン系列を識別するための効果的な方法である★★
Multi-spacer typing as an effective method to distinguish the clonal lineage of Clostridium butyricum strains isolated from stool samples during a series of necrotizing enterocolitis cases
S. Benamar*, N. Cassir, V. Merhej, P. Jardot, C. Robert, D. Raoult, B. La Scola
*Aix-Marseille Université, France
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 300-305
背景
壊死性腸炎は重篤性の高い消化管疾患で、合併症率および死亡率が高く、アウトブレイク時には主として早産児が罹患する。以前の研究で、筆者らは 4 つの新生児集中治療室で発生した壊死性腸炎症例シリーズの便検体から分離された 15 のクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)株を同定した。これらの分離株のクローン系列を in-silico 複数部位塩基配列タイピング(MLST)により検討した。
目的
より多くのC. butyricumゲノムのシークエンシング、および他の遺伝子タイピング法を用いて、以前の所見を確認すること。
方法
全ゲノムシークエンシングを用いて、以前に分離された 15 のC. butyricum株の特徴を明らかにし、C. butyricumの他の 17 の片利共生分離株および環境分離株と比較した。さらに、multi-spacer sequence typing(MST)を用いてクラスタリングの分析を行った。
結果
C. butyricumのコアゲノムは 1,251 の遺伝子から成り、そのパンゲノムは 12,628 の遺伝子から成っており、株の間における多様性が大きかった。壊死性腸炎の症例シリーズの分離株においてクローン系列の識別ができ、地理的クラスタリングを伴って 3 つのクレードを形成していた。全ゲノムシークエンシングおよび MST の両法を用いて得られた結果は一致していた。
結論
multi-spacer sequence typing は、C. butyricumに関連する壊死性腸炎アウトブレイクを調査するための、迅速で安価かつ効果的な遺伝子タイピング法である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)は、グラム陽性の偏性嫌気性菌で、腸管の常在菌であり、ミヤ BM 錠Ⓡは整腸剤として医療現場で使用されている。一方で、乳児のボツリヌス中毒や未熟新生児の壊死性腸炎の原因菌として高い死亡率が報告されている。MLST は、複数のハウスキーピング遺伝子の配列を比較して、迅速性と正確性のために細菌のタイピングに専ら使用されているが、解析する遺伝子の長さが短く、クラスターを鑑別するには限界があることがわかっている。本論文では全遺伝子配列と MST を実施し、MST が迅速かつ安価に MLST では鑑別できないクローンを全遺伝配列解析と同等に分離でき、NICU 内での交差感染を検出できたことを述べている。
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