抗菌剤溶出メッシュ使用時および不使用時の心血管用植込み型電子デバイス感染症の後向き比較分析

2017.03.31

Retrospective comparative analysis of cardiovascular implantable electronic device infections with and without the use of antibacterial envelopes


A. Hassoun*, E.D. Thottacherry, M. Raja, M. Scully, A. Azarbal
*Alabama Infectious Diseases Center, USA
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 286-291
背景
心血管用植込み型電子デバイス感染症は、罹病および死亡と関連する。周術期の予防的な抗菌薬全身静脈内投与により、心血管用植込み型電子デバイス感染症の発生率は低下する。心血管用植込み型電子デバイスと共に植込むポリマーの袋である AIGISRx は、ミノサイクリンとリファンピンを溶出するもので、感染抑制のために導入されている。
方法
心血管用植込み型電子デバイスの植込みを受けた患者 184 例の後向きのレビューを行った。92 例は AIGISRx を使用した植込みを受け(AIGISRx 群)、92 例では AIGISRx は使用されなかった(対照群)。人口統計学的データ、および心血管用植込み型電子デバイス感染症のリスク因子(すなわち、うっ血性心不全、腎不全、慢性腎臓病、経口抗凝固剤の使用、ステロイド連用、リードの交換または修正の必要、一時的ペーシング、早期の再介入、およびリードの留置本数が 3 本以上)に関するデータを収集した。植込みの成功率、広範囲の感染の発生率、および死亡率を、AIGISRx 群と対照群で比較した。
結果
AIGISRx 群は対照群よりも、入院日数が長く(6.8 ± 10.7日間対 3.1 ± 5.2日間、P = 0.001)、コルチコステロイド連用者が多く、交換または修正を受けている率が高く(51.1%対 8.7%、P = 0.001)、心臓内リードが 3 本以上のデバイスを使用している割合が高かった(42.4%対 29.3%、P = 0.03)。両群とも、患者の 97%で植込みが成功した。広範囲の感染は AIGISRx 群の 5.4%、対照群の 1.1%に認められた(P = 0.048)。デバイスの抜去は AIGISRx 群の 3.3%、対照群の 1.1%で実施された。(P = 0.16)。AIGISRx 群で 2 例が死亡した。培養検査ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)が検出された。
結論
AIGISRx 群は対照群と比較して、広範囲の感染の発生率が高かったが、リスク因子も多く有していた。デバイス抜去率および心血管用植込み型電子デバイス関連死亡率は、対照群よりも AIGISRx 群の方が高かった。
監訳者注:広範囲の感染とは、深部組織感染、人工物感染および菌血症をさす。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
抗菌薬溶出人工デバイスの有効性に関する検討であるが、後向き検討のため、数多くのリミテーションがある。基本的に抗菌薬溶出人工デバイスは、感染リスクの高い患者に使用される傾向があったため、使用群と非使用群の間には様々な患者背景の違いがある。研究対象数が多ければこういった患者背景の違いを調整して統計学的処理が行われることもあるが本研究ではそこまでは行われていない。

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