多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)international clone II に対するクロルヘキシジンの効果低下
Reduction in chlorhexidine efficacy against multi-drug- resistant Acinetobacter baumannii international clone II
M. Hayashi*, K. Kawamura, M. Matsui, M. Suzuki, S. Suzuki, K. Shibayama, Y. Arakawa
*Nagoya University Graduate School of Medicine, Japan
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 318-323
背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)international clone II(IC II)型によって院内感染が生じると、臨床的な転帰が大きく悪化する。
目的
IC II および非 IC II の臨床分離株においてクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)と塩化ベンゼトニウムの消毒剤の殺菌効果の差を評価すること。
方法
A. baumannii 臨床分離株のうちIC II 型 137 株および非 IC II 型 99 株と、A. baumannii 以外のAcinetobacter属 69 株について CHG および塩化ベンゼトニウムの最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、MIC 値により、さらに消毒剤感受性低下群と消毒剤感受性群に分類した。各群の代表的な分離株について時間-殺菌曲線と最小殺菌濃度(MBC)を評価した。
結果
IC II 型分離株に対する CHG および塩化ベンゼトニウムの MIC90 はそれぞれ 100 および 175 mg/L であったが、非 IC II 型分離株および baumannii 以外のAcinetobacter属に対する MIC90 は 100 mg/L 未満であった。それにもかかわらず、時間-殺菌曲線において、CHG および塩化ベンゼトニウムを実際的な使用濃度と同等の 1,000 mg/L で使用したとき、 30 秒以内に IC II 型および非 IC II 型の生菌細胞数が 5 log10 減少することが認められた。このCHG を1,000 mg/L で 30 秒間使用した時の MBC は、IC II 型、非 IC II 型の両方で、3%ウシ血清アルブミン(BSA)の添加による影響を受けなかった。一方、塩化ベンゼトニウムの 30 秒での MBC は、BSA 非存在下で 100 mg/L であったが、BSA の添加により 500 mg/L まで増加した。消毒剤感受性低下群分離株と消毒剤感受性群分離株の間にBSA の有無による大きな違いは認められなかった。
結論
CHG および塩化ベンゼトニウムは、IC II 型を含む Acinetobacter 属菌に対して、1,000 mg/L の濃度で少なくとも 30 秒間の曝露により効果を示した。しかしながらこの濃度は、臨床環境と医療環境において、十分な効果を確保するために必要な濃度として、慎重に考えられるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
Acinetobacter baumanniiの IC II 型に対するクロルヘキシジングルコン酸塩および塩化ベンゼトニウムの効果を評価した報告であるが、特に①蛋白質の濃度による効果の低下、②局所濃度を保つこと、および③効果発現には少なくとも 30 秒間の暴露が必要なことが、実際の感染対策上重要といえよう。
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