共用アクセスのコンピュータ化ツールに基づく処方後抗菌薬レビューのための簡便な革新的システムの実施★
Implementation of a simple innovative system for postprescription antibiotic review based on computerized tools with shared access
F. Bouchand*, A. Dinh, A.L. Roux, B. Davido, H. Michelon, M. Lepainteur, B. Legendre, F. El Sayed, I. Pierre, J. Salomon, C. Lawrence, C. Perronne, M. Villart, A-C. Crémieux
*Hôpital Raymond-Poincaré, France
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 312-317
背景
医療機関において抗菌薬の使用を制御すると、その消費と耐性細菌の出現が抑制される。
目的
大学病院で 3 年間に実施した革新的な「抗菌薬適正使用支援」戦略の効果を評価すること。
方法
抗菌薬の集学的チーム(薬剤師、微生物学者、感染症専門家)が処方後レビューを実施した。医師によるコンピューター化されたオーダー入力において、対象抗菌薬(広域スペクトルβラクタム、グリコペプチド、リポペプチド、フルオロキノロン、カルバペネムを含む)の特異的コーディングにより、新たな処方をすべて記録できるようになった。抗菌薬集学的チームの共用アクセスのスプレッドシートに、データ(患者、抗菌薬、処方開始日など)を登録し、このシートに、微生物について得られた結果に基づいて、薬剤選択に関する微生物学者の意見を入力した。微生物学者と薬剤師が処方される抗菌薬の処方を承認しなかった場合、同日中にアラートが発信され、感染症専門家に送信された。このアラートは、感染症専門家による治療の再評価につながった。
結果
2012 年から 2014 年に、対象抗菌薬の処方箋 2,106 件がレビューされた。このうち 389 件(18.5%)はアラートが発信され、293 件(13.9%)は感染症専門家により再評価された。推奨(大半は減量または中止)は 136 件(46.4%)で必要であり、処方者の承認率は 97%であった。推定される介入率は、抗菌薬集学的チームの各メンバーについて 1 日当たり 30 分未満であった。このシステムにより、対象抗菌薬の正しい使用が処方の 91.8%で可能になったが、対象抗菌薬の消費に大きな影響はなかった。
結論
このコンピューター化、共用アクセスの抗菌薬適正使用支援戦略は、時間の節約になり、広域スペクトル抗菌薬の誤用の抑制に有効であると思われる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
過剰で不適切な抗菌薬使用は、抗菌薬耐性菌の出現の主たる原因である。多剤耐性菌による 15 万の感染症と 12,500 例の死亡が毎年フランスで発生している。薬剤師、臨床微生物専門家と感染症医師からなる抗菌薬支援チームを編成するとともに、電子カルテ上での情報共有をおこなうことでスムーズに不適切使用を抽出し、感染症医師による介入による処方是正を実施することができた。抗菌薬適正使用を効果的かつ効率的に実施するためには「情報システム技術」の活用は必須であり、日本における電子カルテシステム内に「抗菌薬適正使用プログラム」を標準装備してもらいたい。
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