メチシリン耐性黄色ブドウ球菌保菌者におけるスティグマの徴候と低い精神的健康度
Signs of stigma and poor mental health among carriers of MRSA
B. Rump*, M. De Boer, R. Reis, M. Wassenberg, J. Van Steenbergen
*Regional Health Service Utrecht Region, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 268-274
背景
多くの国々が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の伝播の予防のためのガイドラインを実践している。スティグマの重大な状況要因は、MRSA と関連して認められ得る。この 10 年間で、これらの措置がスティグマ化の作用をもたらす可能性について、懸念が生じている。
目的
MRSA「掃討」政策を実践する国において、MRSA に関連したスティグマの発生を特定し、定量化すること、およびスティグマと精神的健康度の関連を探索すること。
方法
2014 年に、オランダ人 MRSA 保菌者(MRSA を保菌するが感染の徴候はない者)57 例において、質問票による研究を実施した。スティグマは、Berger HIV Stigma Scale の修正版により測定した。精神的健康度は、5 項目 RAND Mental Health Inquiry により測定した。
結果
32 例(56%)のMRSA 保菌者がスティグマを報告した。このうち 8 例(14%)が「明らかなスティグマ(clear stigma)」(Berger スコア > 110)を、24 例(42%)が「スティグマの疑い(suggestive for stigma)」(Berger スコア 76 ~ 110)を報告した。教育レベル、女性、および集中的な MRSA 根絶療法は、スティグマのスコアが高いことと関連した。低い精神的健康度(RAND スコア < 60)は、MRSA 保菌者の 33%が報告した。スティグマと精神的健康度のスコアは逆相関した。スティグマは医療現場で経験される頻度が最も高く、宗教団体やスポーツ施設ではほとんど経験されなかった。
結論
相当な割合の MRSA 保菌者が MRSA によるスティグマを報告し、スティグマは精神的健康度が低いことと関連した。病院スタッフによるケアの提供方法、および病院内での医療の組織化の方法の両方において、MRSA に関連するスティグマを予期する必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本論文で述べられるスティグマとは(MRSA を保菌していることが恥ずかしいと感じたりして)MRSA 感染に関する間違った認識や根拠に乏しい認識によっておきる行動変容を意味する。MRSA に対する徹底した search and destroy を実施することで極めて低い MRSA 感染の頻度を保持しているオランダで、こういった研究が行われるのは興味深い。
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