集中治療室のサーベイランスを改善するために擦式アルコール製剤消費データの層別化に人工呼吸器使用率を使用
Use of ventilator utilization ratio for stratifying alcohol-based hand-rub consumption data to improve surveillance on intensive care units
W. Wetzker*, K. Bunte-Schönberger, J. Walter, C. Schröder, P. Gastmeier, C. Reichardt
*Charité – Universitätsmedizin Berlin, Germany
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 185-188
背景
ドイツでは、手指衛生遵守の代替パラメータとして病院環境における擦式アルコール製剤の患者・日当たりの消費量に関する国家的なサーベイランスシステムを確立している。集中治療室(ICU)での擦式アルコール製剤消費量データの解析により、様々な診療科の集中治療室間だけでなく 1 診療科の複数の集中治療室のうちでも消費量の幅広さが示されている。これは、ケアの複雑度のばらつきにより ICU 間で患者・日当たりの手指衛生を行う回数が異なることを反映しているようである。
目的
人工呼吸器使用率は、ICU でのケアの複雑度および集中度を記述するために良い代替パラメータなのかどうか、人工呼吸器使用率による層別化は擦式アルコール製剤消費量データにベンチマークを設定する新たな方法として有用なのかどうかを検討すること。
方法
ドイツの国家的な病院感染サーベイランスシステム(KISS)に参加している ICU 365 カ所からのデータを用いた。人工呼吸器使用率は、ICU当たりの人工呼吸器使用日数をICU当たりの患者・日数で除して算出した。擦式アルコール製剤消費量を人工呼吸器使用率にしたがって四分位群に層別化した。
結果
擦式アルコール製剤消費量の中央値は 107 mL/患者・日(四分位範囲[IQR] 86 ~ 134 mL/患者・日)、人工呼吸器使用率の中央値は 33%(IQR 22 ~ 45%)であった。Spearmanの順位相関係数は 0.28 (P < 0.0001)であった。擦式アルコール製剤消費量を人工呼吸器使用率によって層別化後、第 1 四分位群の擦式アルコール製剤消費量は第 4 四分位群と比較して有意に低かった。第 1 四分位群と第 2 四分位群および第 3 四分位群とのあいだにも有意差があった。
結論
人工呼吸器使用率にしたがって擦式アルコール製剤消費量データを層別化することで、ICU における手指衛生遵守の代替パラメータとしての擦式アルコール製剤消費量のデータに基づいたベンチマークパラメータの質が改善されることが示唆されている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ドイツでは病院ごとの擦式アルコール製剤消費量に関する全国的なサーベイランスが行われている。しかし病院や病棟の特性によって必要とされる擦式アルコール製剤の目標使用量は異なる。本稿は擦式アルコール製剤の使用量を擦式アルコール製剤の使用量の病院間比較に、人工呼吸器使用率による調整が有用であることを示した論文である。
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