炭酸ガス送気が開放手術創モデルから空中浮遊粒子を追い出す★
Carbon dioxide insufflation deflects airborne particles from an open surgical wound model
P. Kokhanenko*, G. Papotti, J.E. Cater, A.C. Lynch, J.A. van der Linden, C.J.T. Spence
*Fisher & Paykel Healthcare Ltd, New Zealand
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 112-117
背景
手術部位感染は、依然として医療制度上大きな負担となっている。新たな対策が登場することによってメリットが得られることを期待したい。
目的
空気を介した汚染を減少させる目的で、送気装置を用いた開放手術創への炭酸ガス(CO2)送気の有用性を評価するとともに、創内外の CO2 の分布を測定すること。
方法
技術者と臨床の研究者による実験的アプローチをとり、手術室を想定した環境で開放手術創モデルを作成し、気流パターンと空中浮遊粒子の動きを測定した。レーザー光照射により気流を可視化し、創腔内外部に堆積した粒子の収集および分析により防御の度合いを定量化した。
結果
創部に侵入した直径 5 μm未満の粒子数は、10 L/分の CO2 送気により平均で 1/1,000 に減少した。より大きく重い粒子になると、侵入しやすくなり、1/20 の減少であった。創腔内部および外部での手の過大な動作は、CO2 送気による防御の度合いに影響を及ぼさなかった。CO2 の定常濃度は創腔内部の大部分で 95%を超えたが、創のふちより上では急速に低下し、表面から 25 mm の高さで大気中濃度(0%近く)になった。
結論
創腔内の CO2 は空中浮遊粒子の創部への侵入を防ぎ、防御と同様の役割を果たした。CO2 送気は開放手術における術中感染率の低下に有効な方法であるかもしれない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
手術部位感染を減らすことを目的とし、CO2 送気で創部を充満させ、創部への粒子の付着を少なくしようという本法の試みは、非常に独創的である。工学的にそれを評価するモデルを作成し、実際に結果を得たという点も評価できる。今後の研究の進展と応用に期待したい。
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