中国の 52 の病院を対象とする医療関連感染の点有病率調査★
A point-prevalence survey of healthcare-associated infection in fifty-two Chinese hospitals
Y. Chen*, J.Y. Zhao, X. Shan, X.L. Han, S.G. Tian, F.Y. Chen, X.T. Su, Y.S. Sun, L.Y. Huang, L. Han, Chinese Group on Point-Prevalence Survey of Healthcare-Associated Infections
*Academy of Military Medical Sciences, China
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 105-111
背景
医療関連感染(HCAI)は世界中で患者の安全を脅かす重大な問題となっている。
目的
中国の病院における HCAI の有病率、病原菌、およびリスク因子を明らかにすること。
方法
中国の 52 の病院を対象に、2014年 10月から 2015年 3月までに 1日間の点有病率調査を実施した。ウェブベースのソフトウェアによるシステムを開発し、データの登録および管理に使用した。
結果
調査した患者 53,939例において、少なくとも 1件の HCAI が診断された患者の割合は 3.7%であった。HCAI エピソード 2,182件のうち最も多かったのは下気道感染症(47.2%)であり、次いで尿路感染症(12.3%)、上気道感染症(11.0%)、手術部位感染症(6.2%)であった。少なくとも 1件の HCAI が認められた患者の割合は、集中治療室が最も高かった(17.1%)。人工呼吸器関連肺炎、カテーテル関連尿路感染症、および中心静脈カテーテル関連血流感染を含む、デバイス関連感染は、HCAI 全体のわずか 7.9%であった。最も多く分離された微生物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(206件[9.4%])、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(172件[7.9%])、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(160件[7.3%])、大腸菌(Escherichia coli)(145件[6.6%])であった。調査した患者の33.8%(53,939例中 18,206例)が、調査の時点で少なくとも 1種の抗菌薬の投与を受けていた。HCAI のリスク因子には、高齢(80歳以上)、男性、入院日数、集中治療室への入室、およびデバイスの利用が含まれた。
結論
本研究は、調査した中国の病院における全体としての HCAI の有病率が、多くの欧州諸国および米国で報告されているよりも低かったことを示唆している。中国ではデバイス関連感染以外の HCAI のサーベイランスと予防に多くの注意を払うべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
中国における HCAI に関する調査であるが、52 病院の病院規模は、90%が 3 次医療施設、病床数は 144 から 3,200 床で、四分位範囲は767 ~ 1,800床と非常に巨大な病院群でのサーベイランスである。52 病院の 78%に 3 名の感染管理看護師(ICN)または感染管理医師(ICD)が配置されていた。これらのデータからは、中国のトップレベルの病院では欧米のレベルに近い感染対策が実施されていることが推測されるが、入院患者の年齢層は 20 ~ 60 歳台が70%を占めており、患者分布が異なっているので、これらを考慮して結果を解釈する必要がある。
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