フランスで発生したvanA 型バンコマイシン耐性エンテロコッカス・ラフィノーサス(Enterococcus raffinosus)による初の院内アウトブレイク

2016.12.21

First nosocomial outbreak ofvanA-type vancomycin-resistant Enterococcus raffinosus in France


S. Jolivet*, M. Fines-Guyon, B. Nebbad, J.C. Merle, D. Le Pluart, C. Brun-Buisson, J-W. Decousser, V. Cattoir
*Assistance Publique – Hôpitaux de Paris, France
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 346-350
背景
バンコマイシン耐性エンテロコッカス・ラフィノーサス(Enterococcus raffinosus)が、院内感染および院内アウトブレイクと関連することは、これまでまれであった。
目的
外科集中治療室における vanA 型バンコマイシン耐性 E. raffinosus による院内アウトブレイクの制御に成功した事例を報告すること。
方法
実施した制御対策とともにアウトブレイクの調査内容を報告する。バンコマイシン耐性 E. raffinosus 分離株の分子タイピングは反復配列 PCR 法により行われた。
結果
2014年 9月から 10月の間に、バンコマイシン耐性 E. raffinosus 分離株が 4例の患者から分離された。初発症例はポルトガルでの入院歴があり、今回の入院時のスクリーニング培養ではバンコマイシン耐性腸球菌(enterococci)のコロニー形成は認められなかったが、入院の 19 日後、胆汁検体からバンコマイシン耐性 E. raffinosus が分離された。4 つの分離株はいずれも、vanA 遺伝子を保有しておりバンコマイシンとテイコプラニンの両方に耐性を示したが、ダプトマイシンおよびリネゾリドに対しては感受性を残していた。反復配列 PCR 法により、vanA 陽性 E. raffinosus の単一のクローンが伝播したものと確認された。直腸検体の直接PCR法、接触予防策、および患者や職員のコホーティングを含む感染制御対策が、アウトブレイクの制御の成功につながった。
結論
これは、フランスにおいて入院患者の臨床検体およびスクリーニング検体の両方で vanA 型バンコマイシン耐性 E. raffinosus によるアウトブレイクが報告された初の事例である。初発症例で、選択培地を用いたルーチンのスクリーニングでバンコマイシン耐性 E. raffinosus を検出できなかったことが、今回のアウトブレイクの一因となったと思われる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
分子疫学調査を含む耐性菌アウトブレイクの疫学調査報告である。耐性菌による集積があれば、たとえ症例数が少なくとも、丁寧に記述疫学を行い、記録に残すことはとても大切である。

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