クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の機械的ベクターとしてのイエバエ★

2016.11.30

The housefly Musca domestica as a mechanical vector of Clostridium difficile


M.P. Davies*, M. Anderson, A.C. Hilton
*Killgerm Chemicals Ltd, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 263-267
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染は、イエバエにより伝播される可能性のある細菌性医療関連感染であり、それはイエバエの生態がヒトと密接に関連し、世界各地に分布する性質のためである。
目的
機械的にも細菌摂食後にも C. difficile を伝播するイエバエ の能力を明らかにすること。
方法
イエバエ を C. difficile の栄養型細胞および芽胞の別個の縣濁液に曝露し、次に曝露直後に選択的寒天培地上にハエを置き、1 時間の間隔をあけて培地上に置くことを繰り返し、C. difficile の機械的伝播を評価した。ハエの排泄物を培養し、消化管を解剖し、細胞および芽胞の内在を判定した。
結果
C. difficile の栄養型細胞縣濁液および芽胞縣濁液に曝露したイエバエは、その後、表面と接触すると 4 時間まで細菌を機械的に伝播することができた。ハエ 1 匹あたりの最大数のコロニー形成単位(CFU)は、曝露直後に伝播された(平均 CFU は、栄養型細胞縣濁液 123.8 +/- 66.9、芽胞縣濁液 288.2 +/- 83.2)。1 時間後、これは減少していた(栄養型細胞縣濁液 21.2 +/- 11.4、芽胞縣濁液 19.9 +/- 9)。イエバエの消化管から分離された平均 C. difficile CFU は35 +/- 6.5、糞 1 カ所あたりの平均 C. difficile CFU は 1.04 +/- 0.58 であった。C. difficile はハエの排泄物から 96 時間まで回収することができた。
結論
本研究では、病院内での C. difficile の環境内残存および伝播の一因となるイエバエの能力を記述し、臨床領域におけるこの微生物の現実的なベクターとしてのハエに注目した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ハエを嫌う人は多いが、その実害について考えた人は少ないだろう。実は MRSA や大腸菌などの細菌がハエに付着して伝播することはすでに研究で明らかになっている。本研究は C. difficile においてもハエが伝播に関与することを示したものである。医療施設でハエが飛んでいることは、感覚的に嫌悪感を催すだけでなく、医療関連感染上も実害がある可能性があることを啓蒙していかなければならない。

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