成人における医療関連バンコマイシン耐性腸球菌の動向およびリスク因子★
Temporal trends and risk factors for healthcare-associated vancomycin-resistant enterococci in adults
N. Monteserin*, E. Larson
*Columbia University Medical Center, USA
Journal of Hospital Infection(2016)94, 236-241
背景
特定の地域および医療システム内におけるバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染率の動向に関する公表データは少ない。
目的
VRE による医療関連感染症の動向およびリスク因子を明らかにすること。
方法
本研究は、2006 年から 2014 年に大規模大学医療システムの 3 病院で発生した、腸球菌感染症を有するすべての成人の退院を対象とした。二変量解析を用いて、バンコマイシン感受性菌または耐性菌による感染症と関連する統計学的に有意な因子を明らかにした。統計学的に有意な変数を最終的なロジスティック回帰モデルに含めた。バンコマイシン耐性の腸球菌感染症の割合が経時的に変化したかどうかについて、動向を評価した。
結果
初回の医療関連腸球菌感染症を有する成人 10,186 例を標本に含めた。最終的なロジスティック回帰モデルによる有意な VRE のリスク因子(P ≦ 0.05)は以下の通りであった:3 次病院 1、集中治療室入室期間、Charlson 併存疾患指数高スコア、免疫抑制薬または化学療法薬治療の既往、入院の既往、腎不全、悪性疾患、感染症前の入院期間延長、感染症前の抗菌薬使用、女性、および冬季または春季の感染症罹患。2006 年から 2014 年の間、耐性感染率は 37.1%から 42.9%の間でばらつきがあったが、バンコマイシン耐性の経時的な割合には有意差はなかった(P = 0.36)。
結論
リスク因子を対象とする研究は、VRE 感染症の症例数を減少させる上で重要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
3 つの 3 次医療施設による VRE 感染の危険因子解析を行った論文である。ロジスティック回帰分析の結果はおおむねリーズナブルなものであったが、「病院 1」が危険因子の一つになっていたことが気になった。VRE 感染のリスク因子は施設間で共通のものだけでなく、施設特有のリスクが存在するのでは、と思われた。
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