黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による末梢静脈カニューレ関連の血流感染症を減らす:オーストラリアの大規模医療機関におけるケアバンドル実施の成功
Reducing Staphylococcus aureus bloodstream infections associated with peripheral intravenous cannulae: successful implementation of a care bundle at a large Australian health service
D. Rhodes*, A.C. Cheng, S. McLellan, P. Guerra, D. Karanfilovska, S. Aitchison, K. Watson, P. Bass, L.J. Worth
*Alfred Health, Australia
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 86-91
背景
医療関連の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)は、罹病、死亡および医療費の増大をもたらすが、これらの感染は多くの場合予防可能であると考えられている。
目的
オーストラリアの大規模医療機関において、末梢静脈カニューレ(PIVC)による医療関連SAB を減らすことを目標とし、その挿入と維持に関するプロセスを改善した多面的な予防プログラムを実行すること。
方法
介入前の12か月間、ベースラインとしての臨床状況を評価した。この後2013 年 1 月から 9 月までの間に、医療関連 SAB のリスクを低減させる予防プログラムを導入した。これには職員教育や記録の改善(静脈炎のスコア化など)、標準化された器具の採用が含まれる。そして介入後 27 か月間にわたって監査を行い、医療関連 SAB および PIVC 関連感染の発生率をベースラインと介入後で比較した。介入効果と変化した時期の決定には、分割時系列分析とベイジアン変化点分析を用いた。
結果
PIVC の挿入および管理に関する記録は、介入後に有意に改善し、4 日間以上の PIVC 留置率も有意に減少していた(2.6%対 6.9%、P < 0.05)。ベースライン期間中、医療関連SAB は合計で 68 件発生したが(1.01/10,000病床利用日)、このうち 24 件が PIVC 関連感染であった(全体の 35%、発生率 0.39/10,000病床利用日)。介入後では、全 83 件の医療関連 SAB イベントが発生(0.99/10,000病床利用日)、うち 12 件が PIVC 関連感染であった(全体の 14.4%、発生率 0.14/10,000 病床利用日)。介入後の PIVC 関連 SAB の発生率はベースラインと比較して 63%低く(P = 0.018)、変化点は 2013 年 10 月のバンドルの全面的実施後に認められた。
結論
病院規模での多面的予防キャンペーンの導入成功により、PIVC 関連 SAB の発生率が低下した。費用対効果および持続可能性の評価が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
末梢カテーテル関連感染症、特に黄色ブドウ球菌による血流感染症の発生は、医療関連感染症の中でも予防が急務なものである。今回の検討ではデバイスの使用の減少よりも、カテーテルの扱いのプロセスの向上が、SAB 発生の抑制につながっていた。静脈炎スコアの導入などの工夫が、行動変容・動機づけに影響したところは大きいが、著者も指摘している通り、長期にわたって持続させるための方策もまた大きな課題といえる。
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