患者の手指衛生を向上させる介入:システマティックレビュー
Interventions to improve patient hand hygiene: a systematic review
J.A. Srigley*, C.D. Furness, M. Gardam
*BC Children’s & Women’s Hospitals, Canada
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 23-29
院内病原体は、患者自身の清潔でない手指を介して獲得される可能性があるが、医療関連感染症(HCAI)を予防するための手段としての患者の手指衛生については強調されることが比較的少ない。本システマティックレビューの目的は、患者手指衛生への介入と、通常ケアと比較した際の患者の手指衛生遵守率の改善のHCAI低減への有効性を明らかにすることであった。2014 年 8 月までを対象に、電子データベースと灰色文献を検索した。実験研究および準実験研究について、急性期または慢性期医療施設で実施された患者手指衛生への介入を評価し、HCAI の発生率や患者の手指衛生遵守率をアウトカムとして報告に含めているものを対象とした。すべての段階において、2 名の研究者が独立して実施した。10 件の研究を対象としたが、そのほとんどは対照を設定しない前後比較研究(8 件)であった。介入の大部分(7 件)は複合的であり、医療従事者の手指衛生プログラムと同様に、教育、リマインダー、監査とフィードバック、および手指衛生用製品の提供が含まれた。6 件の研究が HCAI のアウトカムを、4 件の研究が患者の手指衛生遵守率を報告しており、いずれも改善が示されたが、中等度から高度のバイアスのリスクを有していた。結論として、患者手指衛生を向上させるための介入は HCAI の発生率を低減し、手指衛生遵守率を高める可能性があるが、エビデンスの質は低い。今後の研究では、より強固なデザインを用い、アウトカムの選択においてより注意深くあるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
患者の手指衛生は、HCAI 予防のため、と考えると違和感を感じるが、自身の感染予防のためには、できる方がよいであろう。引用された 10 報の論文の中で、8 報でアルコール手指消毒薬が配布あるいは設置され、7 報で教育が実施されていた。アウトカムとして HCAI 予防に寄与しなくとも、入院の機会に学ぶことができるのは患者にとってよいことは間違いない。なお、灰色文献とは、政府刊行物、報告書など通常の出版物流通のルートに乗らない資料をいう。
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