メタロβ-ラクタマーゼ産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による院内アウトブレイクにおける排水管の除菌法としての酢酸
Acetic acid as a decontamination method for sink drains in a nosocomial outbreak of metallo-β-lactamase-producing Pseudomonas aeruginosa
A. Stjärne Aspelund*, K. Sjöström, B. Olsson Liljequist, M. Mörgelin, E. Melander, L.I. Påhlman
*Department of Infection Control, Sweden
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 13-20
背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、バイオフィルム形成によって給排水システムに定着する可能性がある。病院環境では、汚染された流し台は院内伝播と関連付けられている。本稿では、排水管に関連したメタロβ-ラクタマーゼ(MBL)産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による長期アウトブレイクについて報告し、これまで報告されたことのない酢酸による除菌方法を提案する。
目的
病院の排水管に関連した MBL 産生緑膿菌による院内アウトブレイクについて報告し、除菌方法としての酢酸を評価すること。
方法
このアウトブレイクの調査は、微生物学的データベース、微生物学的サンプリングおよび分離株のタイピングにより行った。酢酸の抗菌作用および抗バイオフィルム作用について in vitro で評価した。MBL 産生緑膿菌が検出された流し台に、24%酢酸で週 1 回処置を行い、反復培養によりモニタリングした。
結果
2008 年から 2014 年に、MBL 産生緑膿菌の培養陽性患者 14 例が特定された。患者は 3つの病棟に入院しており、それらの病棟では検査により、患者のトイレに設置された 12 本の排水管で MBL 産生緑膿菌が検出された。臨床分離株および排水管由来の分離株をタイピングした結果、同一の株または極めて近縁の株であることが明らかにされた。MBL 産生緑膿菌のバイオフィルムは酢酸に対する感受性が高く、バイオフィルムの最小根絶濃度は 0.75%(範囲0.19 ~ 1.5)であった。定着を認めた排水管を酢酸により毎週処置した結果、培養陰性となり、伝播が止まった。
結論
酢酸は MBL 産生緑膿菌のバイオフィルムに対して高い効果を示し、排水管の汚染除去および院内伝播の予防のための簡易な方法として用いることが可能である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
高温水処理あるいは配管系に塩素系消毒薬を流すなどが、レジオネラ対策の時には標準である。バイオフィルムに酢酸が十分浸透効果があるとは考えにくく、どうしても除染できない場合には配管系の交換が必要になりうる。また MBL 産生緑膿菌のバイオフィルムとMBL 非産生緑膿菌のバイオフィルムとの間に質的差があるとも考えにくい。
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