重症患者におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の保菌および感染:マッチングによるコホートを用いて非保菌者と比較する後向き研究

2016.09.26

Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae colonization and infection in critically ill patients: a retrospective matched cohort comparison with non-carriers


Y. Dickstein*, R. Edelman, T. Dror, K. Hussein, Y. Bar-Lavie, M. Paul
*Rambam Health Care Campus, Israel
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 54-59
目的
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)と関連する疾患および死亡は基礎疾患や CRE の内在的特性を介しているのかどうかを評価する手段として、CRE 保菌は臨床感染の発生と関連しているかどうかを検討する。
方法
このマッチングによるコホートを用いた後向き研究では、集中治療室(ICU)での侵襲性感染症の発生を CRE 保菌患者とマッチさせた非保菌者とで比較した。主要評価項目は、CRE 保菌者における保菌 CRE と同一属の CRE に起因する感染および非保菌者における保菌者と同一細菌のカルバペネム感性株に起因する感染とした。退院と死亡を競合事象とした。コホート全体で、また Acute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)II スコアによりマッチさせマッチングにより層別化したコホート内で、競合リスクハザード解析を実施した。
結果
合計で CRE 保菌者 146 例を非保菌者 292 例と比較した。患者は、年齢、腎不全、侵襲性感染歴、入院歴、APACHE II スコア、人工呼吸器使用期間、入院期間および CRE 保菌などのほとんどの腸内細菌科細菌感染のリスク因子について適切にマッチされていた。回帰分析では、CRE 保菌が腸内細菌科細菌感染と関連する独立変数であった(要因特異的ハザード比 2.06[95%信頼区間1.03 ~ 4.09])。APACHE II によりマッチさせたコホート(284 例)の回帰分析では、CRE 保菌は依然として腸内細菌科細菌感染と有意に関連していた(要因特異的ハザード比 3.32[95%信頼区間1.31 ~ 8.43])。
結論
CRE 保菌は ICU 患者において保菌株による感染リスクが少なくとも 2 倍高かった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CRE 保菌は、CRE による感染症だけでなく、腸内細菌科細菌による感染症そのもののリスクを上昇させることを報告した研究である。2 群間は適切にマッチされているが、やはり後向きの症例対照研究であり結論の妥当性には限界があるように思われる。

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