転移性脊椎腫瘍に対する手術を受けた患者の生存および手術部位感染の影響★

2016.09.26

Survival of patients undergoing surgery for metastatic spinal tumours and the impact of surgical site infection

R.A. Atkinson*, B. Davies, A. Jones, D. van Popta, K. Ousey, J. Stephenson
*Salford Royal NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2016) 94, 80-85

 

背景
転移性脊椎腫瘍患者の生命予後は限られている。手術合併症は、入院期間の延長や再入院につながる可能性があり、極めて望ましくない。手術部位感染(SSI)はそのような合併症の一つであり、極端な場合には死に至ることもある。

 

目的
脊椎転移に対する手術後の患者の生存に SSI が及ぼす影響を評価すること。

 

方法
英国の大規模 3 次紹介病院にて脊椎転移に対する手術を受けた患者 152 例について、人口統計学的、手術関連および生存に関するデータが収集された。ベースライン時に、米国麻酔学会(ASA)分類および改訂徳橋スコア(Revised Tokuhashi Score;RTS)が、それぞれの健康状態および予後の評価項目として算出された。セミパラメトリックなコックス比例ハザードモデルによる生存分析を用いて、共変量と生存の関係が評価された。

 

結果
17 例(11.2%)に SSI が発現した。全体として、術後生存期間の中央値は 262 日(95%信頼区間[CI]190 ~ 334日)、12か月生存率は 42.1%であった。RTS(ハザード比 0.82、95%CI 0.76 ~ 0.89、P < 0.001)および ASA 分類(ハザード比 1.37、95%CI 1.03 ~ 1.82、P = 0.028)は生存と有意に関連しており、生存が良好であったのは RTS が高く ASA スコアが低い患者であった。感染の有無は予後において重要であり、SSI のない患者は生存が良好であった(P = 0.075)。

 

結論
脊椎転移に対する手術を受けた患者の 12か月生存率は約 42%であった。RTS および ASA スコアは、両者の組み合わせ、もしくは単独で、患者の生存の指標として用いられるかもしれない。SSI は生存に対していくらか負の影響を及ぼすが、統計学的有意性を確認するためにはより多くの症例数が必要であろう。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント
英国 NICE 臨床ガイドライン 75 によると、脊椎転移のある患者への手術適応は、疼痛、脊椎の不安定性および神経学的症状の緩和であり、3 か月以上の生存が望める患者に対して実施される。したがって、SSI の発生はあってほしくない合併症である。SSI を発生した患者は、死亡率が 2 倍となり、ICU 入室期間も 60%延長する。改訂徳橋スコアとは、転移性腫瘍患者の予後を、全身状態、脊椎以外の他の骨転移数、脊椎転移数、原発巣の種類、腫瘍臓器の転移の有無、麻痺の状態を点数化して、予測するものである。
(参考文献:
http://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/report_2009/2009-a1.pdf

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