8 種類の消化器手術後の手術部位感染症における患者関連のリスク因子★

2016.08.13

Patient-related risk factors for surgical site infection following eight types of gastrointestinal surgery


H. Fukuda*
*Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University, Japan
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 347-354
目的
感染症サーベイランスの取り組みの一環として収集できた、8 種類の消化器手術後の手術部位感染症(SSI)における患者関連のリスク因子を明らかにすること。
デザイン
Japan Nosocomial Infections Surveillance(JANIS)および Diagnosis Procedure Combination(DPC)の両プログラムから成る既存のデータセットからの記録の統合。
方法
35 施設の病院の患者データを、2007 年から 2011 年について JANIS および DPC を用いて抽出した。患者関連因子と SSI 発生率を記録し、分析した。SSI に関連するリスク因子について、マルチレベル混合効果ロジスティック回帰モデルを用いて検討した。
結果
全体で、虫垂切除術 2,074 件、胆管、肝臓または膵臓の手術 2,084 件、胆嚢摘出術 3,460 件、結腸手術 7,273 件、食道手術 482 件、胃の手術4,748 件、直腸手術 2,762 件、および小腸手術 1,202 件を分析した。多変量解析を用いて、術中の輸血が、虫垂切除術と小腸手術を除くすべての種類の消化器手術後の SSI のリスク因子であることが示された。さらに、糖尿病が、結腸手術(オッズ比[OR]1.23、P = 0.028)および胃の手術(OR 1.70、P < 0.001)後の SSI のリスク因子であった。ステロイド剤の使用は、胆嚢切除術後(OR 2.83、P = 0.003)および結腸手術後(OR 1.27、P = 0.040)の SSI の発生率上昇と有意に関連していた。
結論
術中の輸血、糖尿病およびステロイド剤使用は、消化管手術後の SSI のリスク因子であり、これらの手術における SSI サーベイランスの一環として含めるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本論文は、JANIS のデータと DPC を統合したデータセットの解析による日本の消化器手術での SSI のリスク因子を解析したものである。データ源の特性上、患者個人に基づく危険因子を拾い上げることはできないが、その一方、複数施設でのデータ解析で見える特徴があると考えられた。

同カテゴリの記事

2009.10.30

Epidemiology of Pseudomonas aeruginosa in a tertiary referral teaching hospital

2006.03.31

Infectious complications of implantable ports and Hickman catheters in paediatric haematology窶登ncology patients

2020.03.31

Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents

G. Kampf*, D. Todt, S. Pfaender, E. Steinmann
*University Medicine Greifswald, Germany
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 246-251

 

 

2009.04.30

Risk factors for colonisation of newborn infants during an outbreak of extended-spectrum β-lactamase-producing Klebsiella pneumoniae in an intermediate-risk neonatal unit

2020.09.30

Surveillance of bloodstream infections in intensive care units in England, May 2016–April 2017: epidemiology and ecology
S.M. Gerver*, M. Mihalkov, J.F. Bion, A.P.R. Wilson, D. Chudasama, A.P. Johnson, R. Hope, on behalf of the Infection in Critical Care Quality Improvement Oversight Group
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 1-9

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ